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学芸員の瀬能が共同執筆した熱帯・亜熱帯性魚類の分布北上を示唆する論文が公表されました

2020年3月31日更新

国立大学法人筑波大学 生命環境科学研究科生物科学専攻博士後期1年の山川宇宙氏と同生命環境系・山岳科学センター菅平高原実験所 津田吉晃准教授は、神奈川県立生命の星・地球博物館 瀬能 宏学芸員らと共同で、温帯に位置する相模湾周辺(静岡県伊豆半島~神奈川県三浦半島~千葉県房総半島)で行なった調査において、熱帯・亜熱帯性魚類7種を採集し、それら各魚種について過去の記録状況と比較した結果、7種の分布が近年、北上傾向にあることを明らかにし、その成果を『神奈川自然誌資料41号』に論文として発表しました。

産業革命以降、地球温暖化による海水温の上昇傾向が続いています。その結果、熱帯・亜熱帯域(琉球列島以南)に生息する魚類が、黒潮を介して、温帯域(九州以北)に北上してくる可能性が高まっています。しかし、そうした魚類の分布動向を詳細に調べた研究はこれまであまり行なわれていませんでした。

本研究グループは、黒潮の北東端に位置する相模湾周辺の沿岸域や河川で採集調査を行い、主に熱帯・亜熱帯域に分布する7魚種(オニボラ、チャイロマルハタ、ニセクロホシフエダイ、オオクチユゴイ、カマヒレマツゲハゼ、ヒトミハゼ、カスミフグ)の標本を得ました。各種の標本に基き、これらは黒潮流域における北限記録や東限記録であることが確認されました。また、過去の文献記録や標本・写真記録も調べたところ、各種の記録は近年、温帯域である九州以北、特に本州において増加・北上傾向にあることや、一部の種は本州や四国で越冬していることが示唆されました。このような北上傾向には、温暖化による海水温上昇に加え、下水処理水や温泉排水などの人工排水に起因する海水温・河川水温の上昇が寄与していると推測されました。本研究を端緒として、より多くの熱帯・亜熱帯性魚種で過去の記録が調査され、分布動向と温暖化・人工排水による水温上昇の関係が解明されると同時に、これからの海水温上昇に関する予測研究を併せて行なうことにより、将来の魚類の分布動向を予測し、海洋生物多様性保全や水産資源管理にもつながることが期待されます。

なお、研究の背景、研究内容と成果、今後の展開についての詳細は筑波大学からのプレスリリース外部リンクを参照してください。

 

参照論文

山川宇宙・三井翔太・小田泰一朗・森田 優・碧木健人・丸山智朗・田中翔大・斉藤洪成・津田吉晃・瀬能 宏. 2020. 相模湾およびその周辺地域で記録された分布が北上傾向にある魚類7種. 神奈川自然誌資料, (41): 71-81.PDF(5,977KB)

 

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