学芸トピックス―苅部治紀―
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学芸員の苅部がテレビ番組で小笠原諸島の外来種問題について解説しました

学芸員の苅部がテレビ番組で小笠原諸島の外来種問題について解説しました

2018年8月14日更新

学芸員の苅部が、2018年7月17日放映のNHK WORLD 「NEWS LINE」において、小笠原諸島で在来昆虫を地域絶滅や激減させた侵略的外来種のトカゲの仲間であるグリーンアノールが引き起こしている問題について解説しました。

グリーンアノールは、北米中部原産で、鮮やかな緑色をした体長15センチほどの緑色をしたトカゲの仲間です。小笠原諸島には、第二次世界大戦後のアメリカによる統治時代にグアム島から資材にまぎれて持ち込まれたという説が有力で、有人島の父島・母島の二つの島で数百万頭が生息していると推定されています。グリーンアノールは、1980年代には父島で、1990年代には母島で急増し、その結果、固有種を含む多くの昼行性の在来昆虫を地域的に絶滅させたり、激減させる要因になりました(図1)。

侵入確認後からこれまで、グリーンアノールは父島・母島両島のみから記録されていましたが、2013年3月には父島の直北に位置する無人島の兄島で確認されました。その後、関係機関と地域、研究者の連携で分布範囲が把握され、大量のトラップ設置(現在では約5万個)による捕獲が進められてきました。その結果、これまで拡大傾向にあったグリーンアノールの分布が、今年度はより高密度になっている地域が確認されるようになりました。同時に、これまで顕著な減少は認められなかった、在来昆虫の激減が初めて確認され、状況はさらに危機的になりつつあります。

番組では、小笠原におけるこれまでのグリーンアノールの状況と対策、今後危惧される事態と現在着手され始めている新たな対策などについて解説しました。

 

葉の間から顔をのぞかせるようす
図1.固有種オガサワラゼミを捕食するグリーンアノール