学芸トピックス―瀬能 宏―
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山形県産淡水魚コレクションの当館への寄贈が新聞記事になりました

山形県産淡水魚コレクションの当館への寄贈が新聞記事になりました

2017年9月1日更新

8月22日に当館に搬入された山形県産淡水魚のコレクションに関する記事が読売新聞山形版(8月21日)や庄内日報(8月23日)に掲載されました。このコレクションは、鶴岡淡水魚夢童の会を主宰する岡部夏雄さんが1994年以降に山形県内の河川から収集した淡水魚の標本です。標本瓶にして約2,700本という膨大なもので、ニホンイトヨやトミヨ属雄物型、シナイモツゴ、キタノアカヒレタビラ、コシノハゼなど、県や国の絶滅危惧種に選定されている種を多数含んでいます。また、長年に渡って県内全域から網羅的に収集されてきた標本であることから、同県の淡水魚類相の変遷を記録した証拠標本になるだけでなく、保全の施策を立てるための基礎資料にもなるでしょう。さらに遺伝子を分析するためにアルコールで固定した標本も含まれるため、生物地理学的にも注目されている同地の淡水魚類の系統地理や分類学の研究にも寄与することが期待されます。

ただし、この貴重なコレクションを保管し、活用していくためには、まずは標本の所在と同定結果を手書き台帳と付き合わせながら確認し、当館の標本番号を与え、対応する情報(採集日、採集場所、採集者など)をデータベースに登録する必要があります。そして登録された標本は、種ごとに所定の棚に並べ、必要に応じていつでも取り出せるようにしておかねばなりません。こうして初めてコレクションが調査・研究や展示を含む普及教育に活用できるようになりますが、整理を終えるには膨大なコストがかかるため、その道が開けるのはかなり先のことになるでしょう。

 

ウケクチウグイの標本
写真1 アルコールで固定されたウケクチウグイの標本

 

標本瓶 
写真2 ウケクチウグイのラベルが貼られている標本瓶

標本を確認したところ、大小8個体のウケクチウグイ以外にウグイ属の幼魚の標本(写真1;右下の1個体)が含まれていたが、容器に貼られたラベルには「ウケクチウグイ 1999年7月27日 飛鳥沼大町溝水路」と書かれている(写真2)。このような場合、標本番号札(保存液に永久的に耐える手作りの布札)を大きな1標本に一つ、小さな7標本に一つ、ウグイ属の幼魚標本に一つを与える。標本番号に対応する種名や産地情報などのデータは電子台帳に入力するが、その際、採集地である「飛鳥沼大町溝水路」は地図を調べると複数の町域にまたがっているので、それらを包含する「山形県酒田市;Sakata City, Yamagata Prefecture」を行政界名とする。また、同水路は最上川水系に含まれるため、地域名に「最上川水系飛鳥沼大町溝;Asuka-numa-Omachiko, Mogami-gawa Riv. Sys.」を入力する(地域名の読み方も事前に調べる必要がある)。その他にも採集日や採集者、遺伝子分析が可能なことなど、必要事項をすべて入力する。標本は、蓋と容器本体に種和名や科和名、科種コードを記入したビニールテープを貼った標本瓶に収め、所定の棚(科種コード順)に配架する