学芸トピックス―大島光春―
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学芸員の大島と折原が化石トガリネズミ類の新種を発表しました

学芸員の大島と折原が化石トガリネズミ類の新種を発表しました

2018年1月14日更新

学芸員の大島と折原が、国立科学博物館の冨田博士と共著で、東アジアから初記録である絶滅した哺乳類(真無盲腸類)プレシオソレックス属の新種Plesiosorex fejfari を発表しました。ホロタイプは岐阜県可児市土田のおよそ1850万年前(前期中新世)の瑞浪層群中村層から1995年に発見された左下顎骨で、国立科学博物館が所蔵しています(標本番号NMNS PV-20155)。

新種P. fejfari の特徴は、大きく細長い下顎体をもつこと、下顎体の腹側がほぼ水平であること、関節突起と下顎角が共に長く後方へ突き出していること、第3小臼歯の歯根が2本あること、 第1大臼歯のハイポコニュリッド(歯の遠心にある小咬頭)やシンギュラム(歯帯)を欠いていることなどです。種小名の ”fejfari” は、プラハにあるチャールズ大学Univ. Karlovyの名誉教授で、新生代哺乳類の研究に貢献されたオルドリッチ・フェイファーOldřich Fejfar博士に献名したものです。

 

岩石から半分露出
図1.頬側面のみクリーニングした状態。下顎枝の骨はないが痕ははっきりわかる。

 

これまでに知られているプレシオソレックス属の化石記録にこの新種を加え、分岐分析の結果を重ねると、プレシオソレックス属は中新世の初めにヨーロッパに出現 (P. soricinoides) し、前期中新世の間に中央アジア (P. aydarlensis)、東アジア (P. fejfari) を経て北アメリカ (P. coloradensis) まで分布を拡げたことが分かりました。その後それぞれの地域で進化したため、中期中新世の種同士を比べると、ヨーロッパの系統 (P. germanicusP. schaffneri) と北アメリカの系統 (P. donroosaiP. latidens) に分かれます(中期中新世以降アジアからの産出は知られていません)。

プレシオソレックス属の進化は、2000万年前頃始まった日本海の拡大やベーリング陸橋の消長と深い関係があるかもしれません。

 

化石の頬側面
化石の舌側面
図2.母岩から取り外しクリーニングが終了した状態。
上)頬側面、下)舌側面。

 論文情報

Oshima, M., Y. Tomida & T. Orihara, 2017. A new species of Plesiosorex (Mammalia, Eulipotyphla) from the Early Miocene of Japan: first record of the genus from East Asia. Fossil Imprint, 73(3-4): 292–299.

ISSN 2533-4050 (print), ISSN 2533-4069 (on-line).

チェコ国立博物館 open access <http://fi.nm.cz/en/>