学芸トピックス―瀬能 宏―
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学芸員の瀬能がNHKの番組に出演し、ヒョウモンシャチブリについて解説しました

学芸員の瀬能がNHKの番組に出演し、ヒョウモンシャチブリについて解説しました

2015年3月26日更新

学芸員の瀬能が3月21日(土曜)に放送されたNHKのBSプレミアムの番組「深海のロストワールド 追跡!謎の古代魚」に出演し、ニューギニア島近くの深海で撮影されたヒョウモンシャチブリ(シャチブリ科ヒョウモンシャチブリ属)について解説しました(4月5日の午後2時30分~3時59分に再放送されます)。

この魚は、熊野灘と琉球列島の久米島で採集された3標本に基づき、当館学芸員の瀬能の他、桑山真次氏(蒲郡市竹島水族館)と平手康市氏(沖縄県海洋深層水研究所)の3名の共同研究により新種として発表されました。2008年3月のことでした。発見当時、全長70cmにもなる大型でしかも派手な色彩をしている新種の深海魚が見つかったことが話題となりました。シャチブリ科の他属よりも体が太短く(他属では細長い)、3対のアンテナ状の遊離鰭条を備えた腹鰭が発達していること(腹鰭は退化し、1対のアンテナ状)などが特徴で、これまでに山口県沖の日本海で得られた追加標本を合わせても4標本が知られているに過ぎない希少な深海魚です。腹鰭にある3対の遊離鰭条をアンテナのように使い、岩の亀裂の間で体をぶつけないように泳いだり、餌を探したりしていると考えられています。ヒョウモンシャチブリ属には本種の他に大西洋の東縁と太平洋の東縁に分布するギュンテルス・アルチベラGuentherus altivelaが知られています。両種は大西洋と太平洋の広大な範囲に局所的な分布パターンを示し、シャチブリ科の他属では退化的な腹鰭がこの属では発達しています。これらのことから、ヒョウモンシャチブリ属はシャチブリ科の中では古い種族で、ヒョウモンシャチブリは西太平洋の遺存固有種であると考えられます。

番組で取り上げられたヒョウモンシャチブリの標本は、3月21日(土曜)~4月5日(日曜)までと、4月25日(土曜)~5月24日(日曜)までの間、当館特別展示室で公開します。この機会にぜひご覧になってください。

 

標本画像

ヒョウモンシャチブリGuentherus katoi のホロタイプ(KPM-NI 16647)
熊野灘沖(水深319.5~352.5m)

標本画像

ヒョウモンシャチブリGuentherus katoi のホロタイプ(KPM-NI 16647)の腹鰭
通常の腹鰭の他にアンテナ状の遊離鰭条が3対ある

標本画像

シャチブリAteleopus japonicus (シャチブリ科シャチブリ属) KPM-NI 35762  相模湾産
体が細長く、腹鰭はアンテナ状で1対。

※KPM-NIは当館の魚類標本の資料番号であることを示す記号です。