学芸トピックス―瀬能 宏―
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学芸員の瀬能のアユモドキに関するコメントが山陽新聞に掲載されました

学芸員の瀬能のアユモドキに関するコメントが山陽新聞に掲載されました

2015年11月20日更新

絶滅危惧種アユモドキに関する学芸員の瀬能のコメントが、共同通信社の配信記事として11月13日付けの山陽新聞電子版に掲載されました。

アユモドキはドジョウ科アユモドキ属の淡水魚で、日本では琵琶湖淀川水系の他に、岡山県の旭川・吉井川水系や高梁川水系、広島県東部の芦田川に分布していました。しかし、産卵場所や稚魚が育つ休耕田や河川敷内の湿地環境の消失等により各地で地域絶滅を起こし、現在では岡山県と京都府の一部にかろうじて生き残るだけとなってしまいました。そのため、国のレッドリストでは絶滅危惧IA類(現状のまま放置すれば近い将来絶滅する可能性が最も高い種)に選定されており、さらには国の種指定の天然記念物に加えて、種の保存法により絶滅のおそれのある指定種にも指定されています。

このたび、国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種(CR:野外での絶滅危惧度の最も高いランク)に選定されることとなり、国内はもとより、国際的にも種としての存続が危ぶまれている生物として認められることになりました。これほどまでに絶滅の危険性が指摘され、法律的にも厳しく守られているにもかかわらず、琵琶湖淀川水系最後の生息地である京都府亀岡市では、生息地にサッカースタジアムの建設計画が進められており、その存続が危ぶまれています。アユモドキに限らず、生物の多様性を適切に保全するためには、長期的には多くの国民が知識や教養を高めたり、自然度の高い環境を体験することで価値観そのものを変えていくしかありませんが、短期的にはこれ以上の環境改変を認めないという国や自治体の強い姿勢が求められています。