学芸トピックス―瀬能 宏―
トップページ
学芸トピックス
学芸トピックス―瀬能 宏―
特別研究員の宮崎と学芸員の瀬能がブルーギルの違法導入事例を発表しました

特別研究員の宮崎と学芸員の瀬能がブルーギルの違法導入事例を発表しました

2016年3月4日更新

2005年6月に外来生物法が施行されて以降、特定外来生物であるブルーギルの飼育・放流・運搬等は厳禁されています。当館特別研究員の宮崎、学芸員の瀬能および東京海洋大学海洋科学部海洋環境学科2年次の学生である手良村知功氏による共同研究によって、2015年6月に神奈川県横浜市茅ケ崎公園プールにおいて採捕された魚類の標本やその時に撮影された写真の科学的精査にもとづき、ブルーギルの違法導入の実態が初めて明らかにされました。

この事例は科学論文としてまとめられ、ブルガリアの学術出版社であるPensoft Publishersによって発行されているオープン・アクセスの国際誌『ZooKeys』に2016年2月26日付けで掲載されました。

本研究は、手良村氏がTwitterにおいて発信した情報(プール掃除においてブルーギル等の水生生物が採集されたこと)を見た宮崎が、ブルーギルの違法導入を初めて裏づける状況証拠が揃いうることに気付き、科学論文としての発表を提案したことが契機となりました。その時の魚類の標本や写真資料は、当館に登録・保管することで科学的に再検証可能なvoucher(証拠)とし、研究に活用されました。

今回の学生による科学的な貢献を意図しない情報発信から科学論文としての発表に繋げた事例は、近年急速に発展しつつあるCitizen Science(市民科学)という新興の学術領域における方法論の一端として捉えることができると研究グループでは考えています。

本研究は、生物多様性保全および外来生物法に関する普及教育が幅広い世代に対して必要である一方、市民が科学や生物多様性保全に多様な形で貢献できることを示したと研究グループは考えています。

なお、本研究の成果は、世界中の科学ニュースのトピックスを紹介するEurekAlert!にリリースされました。

 

それぞれのようす
A: プール掃除の際に採捕されたブルーギルの稚魚の写真(KPM-NR 164120)
B:  寄贈されて当館の標本として登録・保管されたAの個体(KPM-NI 38654)
C: プール掃除の際に採捕されたブルーギルの成魚の写真(KPM-NR 164118)

論文の書誌情報

Miyazaki, Y., A. Teramura & H. Senou, 2016. Biodiversity data mining from Argus-eyed citizens: the first illegal introduction record of Lepomis macrochirus macrochirus Rafinesque, 1819 in Japan based on Twitter information. ZooKeys, (569): 123-133. doi:10

 

※KPM-NIおよびKPM-NRは、当館の資料番号であることを示す記号です。