学芸トピックス―瀬能 宏―
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学芸トピックス―瀬能 宏―
学芸員の瀬能による淡水魚の保全についてのコメントが「信濃毎日新聞」他複数のメディアに掲載されました

学芸員の瀬能による淡水魚の保全についてのコメントが「信濃毎日新聞」他複数のメディアに掲載されました

2016年3月11日更新

日本の淡水魚に迫る絶滅危機に関する学芸員の瀬能のインタビュー記事(共同通信社配信)が、3月2日付け『信濃毎日新聞』、3月4日付け『秋田魁新報』、3月5日付け『大分合同新聞電子版』に掲載されました。

このインタビュー記事は、現状取り得る保全策だけでは絶滅の危機に瀕する淡水魚を守れないことに警鐘を鳴らす目的でコメントしたものです。

生物多様性保全の観点から淡水魚をレッドリストに掲載して絶滅の危険性を啓発したり、条例で採集を禁止するなどの措置が取られていますが、それだけでは本当にぎりぎりまで追い込まれた淡水魚を守ることはできません。最も強力な法規制である「種の保存法」によって希少種に指定されれば、採集の禁止だけでなく、保護区を設けることで生息地を丸ごと保全することが可能です。

ところが法的拘束力が強いために、かえって指定が遅れている現状があります。人が立ち入らない場所に規制をかけることができても、経済活動が活発な身近な場所での保全は進むどころか後退の一途を辿っています。現在、淡水魚ではミヤコタナゴ、スイゲンゼニタナゴ、イタセンパラ、アユモドキの4種が指定されていますが、ヒナモロコやウシモツゴ、ゼニタナゴ、セボシタビラなど、同等の危機に直面している淡水魚は他にも知られています。

こうした淡水魚に残されたわずかな生息地は、溜池や農業用水路、市街地を流れる河川だったりと、容易には保護区に指定できない問題があります。関係省庁や自治体が指導力を発揮するとともに、地権者や既得権益者はもちろん、一人でも多くの国民に生物多様性の大切さを理屈抜きで理解できる感性が養われない限り、日本産淡水魚の複数種が野外から姿を消す日もそう遠くないと思われます。

 

ウシモツゴの標本

KPM-NI 3188 ウシモツゴ
岐阜・愛知・三重に分布していたが、確認されている生息地は10地点以下

ゼニタナゴの標本

KPM-NI 24223 ゼニタナゴ
東北地方の溜息にわずかな生息地が残るのみ

ヒナモロコの標本

KPM-NI 25010 ヒナモロコ
筑後川水系の一部の用水路に残存するのみ

セボシタビラの標本

KPM-NI 39874 セボシタビラ
近年急速に減少しつつあり、その動向には最大級の注意が必要

※KPM-NIは、当館の資料番号であることを示す記号です。