学芸トピックス―渡辺恭平―
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当館収蔵の昆虫標本が新種の記載に使用されました

当館収蔵の昆虫標本が新種の記載に使用されました

2016年9月6日更新

当館収蔵のヒメバチ科昆虫の標本が、神戸大学大学院の伊藤誠人氏、前藤 薫教授による分類学的研究で使用され、新種Ishigakia albitarsa Ito & Maeto, 2016(和名なし)のホロタイプに指定されました。ホロタイプは学名の拠り所となる唯一の標本(担名タイプ)であり、ホロタイプが現存する限り、その生物の学名はこの標本を基準とします。ホロタイプは新種命名時に用いた標本の中から、特に種の特徴を示す個体や状態の良い個体など、ただ一個体を選び、指定します(研究で用いた残りの標本はすべてパラタイプとなります)。

種の扱いに疑問が生じたときなど、このホロタイプが学名の基準となることから、学術上特に重要な標本であり、海外の研究者が調査することも少なくはありません。また、ホロタイプはとくに厳重に管理を行う必要があるため、信頼される研究機関でのみ、収蔵されるものです。

この標本は当館学芸員の渡辺が鳥取県で採集していた個体であり、伊藤氏が当館で標本調査を行い、借用していたもので、返却後は当館に永久的に収蔵されます(資料番号KPM-NK 5006270)。

※KPM-NKは当館の資料番号であることを示す記号です。

 

論文情報

Ito, M. & K. Maeto, 2016. Revision of Ishigakia Uchida (Hymenoptera: Ichneumonidae: Acaenitinae) from Japan, with a new species having a close relative in South Africa. Zootaxa, 4136(1): 174-180.

 

標本
図.当館収蔵のIshigakia albitarsaのホロタイプ(♀).スケールバーは5.0 mm.