学芸トピックス―瀬能 宏―
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学芸員の瀬能が日本初記録の魚類寄生虫に関する共著論文を発表しました

学芸員の瀬能が日本初記録の魚類寄生虫に関する共著論文を発表しました

2016年11月30日更新

学芸員の瀬能が日本初記録の魚類寄生虫に関する共著論文を、上野大輔博士(筆頭著者;鹿児島大学大学院理工学研究科)、崎山直夫氏(新江ノ島水族館展示飼育部魚類チーム)と共に発表しました。本研究は大学の研究者、水族館と博物館の学芸員がそれぞれの立場で協力し合った成果と言えるものです。

魚類には体の内外に様々な寄生虫が寄生していることが知られています。このたび、相模湾から得られた魚類のアマシイラLuvarus imperialis(アカマンボウ目アマシイラ科)の体表に寄生していたカイアシ類が、世界で2例目であり、日本からは属のレベルで初記録となるLuetkenia elongata Shiino, 1963であることを明らかにした論文が、日本動物分類学会が発行する国際学術誌『Species Diversity』の21巻(2016年11月25日発行)に掲載されました。

本種は1963年にカリフォルニア沿岸産のアマシイラから得られたわずか2標本(雌雄1個体ずつ)に基づき新種記載されて以来追加記録がなく、その実態については不明な点が多かったのですが、今回得られた多数の標本に基づく詳しい形態の調査の結果、近似種との違いが明らかにされました。

本種の標準和名は本論文でマヨイサメジラミ、本種が含まれる属についてはマヨイサメジラミ属と命名されました。これは本種が分類されている科(Pandaridae)の一般名称がサメジラミであることと、宿主がサメではない魚であることに因んだものです。

本研究に用いられたマヨイサメジラミの標本は、国立科学博物館甲殻類標本(NSMT-Cr 24637:雌1個体;NSMT-Cr 24638:雄1個体)および当館甲殻類標本(KPM-NH 1772:雌9個体と雄8個体)として保管されています。

なお、宿主のアマシイラは当館魚類標本(KPM-NI 39783)として保管され、その詳細については、『神奈川自然誌資料』の38号(2017年2月発行予定)に掲載されます。

写真説明

寄生しているようす

写真1 アマシイラの臀鰭付近に寄生するマヨイサメジラミ
写真(KPM-NR 108977Q):瀬能 宏撮影

アマシイラの標本

写真2 宿所のアマシイラ
KPM-NI 39783 尾叉長1520 mm 写真(KPM-NR 108977A):瀬能 宏撮影

※KPM-NH、KPM-NI、KPM-NRはそれぞれ当館の資料であることを示す記号です。

※NSMT-Crは国立科学博物館の甲殻類標本であることを示す記号です。

 

論文情報

Uyeno, D., H. Senou & T. Sakiyama, 2016. Redescription of Luetkenia elongata (Copepoda: Siphonostomatoida: Pandaridae), an ectoparasite of Luvarus imperialis (Actinopterygii: Perciformes: Luvaridae), with a new record from Japanese waters. Species Diversity, 21: 135-142. doi: 10.12782/sd.21.2.135