学芸トピックス―瀬能 宏―
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学芸員の瀬能がテレビ番組で魚の名前について解説しました

学芸員の瀬能がテレビ番組で魚の名前について解説しました

2018年8月22日更新

学芸員の瀬能が8月16日に放送されたNHKの「日本人のおなまえっ! いきものおなまえ夏SP 」に出演し、ウッカリカサゴとマカフシギウオの名前の由来について解説しました。

ウッカリカサゴはメバル科の海水魚で、1978年にロシアと台湾の研究者により、長崎産の標本に基づき新種として発表されました。翌年、故阿部宗明博士は、築地市場に入荷するこの種を『新顔の魚』という小冊子で紹介する際に、ウッカリカサゴという標準和名を命名しました。理由はカサゴにそっくりなので、うっかりしていると見間違うことに因みます。

一方、マカフシギウオはカンムリキンメダイ目フシギウオ科フシギウオ属に分類され、成魚でも体長12.4cmほどの小さな深海魚です。フシギウオ属には大西洋に分布するGibberichthys pumilusと、太平洋に分布するG. latifronsの2種が知られており、1983年に前者に対してフシギウオという標準和名が付けられました。命名の理由は書かれていませんが、この仲間の仔魚に特有な房状構造を複数持つ腹鰭に因んだものと思われます。この特殊な構造の機能は、海外の研究者によって詳しく研究され、1984年にはクラゲや海藻への擬態であろうと考えられていました。ところが、2005年7月6日、沖縄県座間味島の水深4~5mで河野貴幸さんにより撮影された水中写真によってその謎が解明されたのです。この写真を見た仔稚魚研究の第一人者であった故沖山宗雄先生は、房状の構造は体にそっくりで、本体のダミー(体への擬態)であることに気がつかれたのでした。2007年にこのことをまとめた論文の中で命名された標準和名がマカフシギウオです。2013年、日本の魚をほぼ網羅した本が出版されたのですが、マカフシギウオはなぜか掲載されていません。担当者に問い合わせたところ、なんとマカフシギなことにウッカリ見過ごしていたとか!?

ウッカリカサゴやマカフシギウオの映像は、魚類写真資料データベースで検索・閲覧することができます。ぜひご覧になってください!!


標準和名マカフシギウオが命名された論文
Okiyama, M., H. Senou and T. Kawano. 2007 (March 22). Kasidoron larvae of Gibberichthys latifrons (Osteichthyes, Gibberichthyidae) from Japan. Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. A, 33(1): 45-50.