学芸トピックス―瀬能 宏―
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タマカイに関する学芸員の瀬能のコメントが新聞に掲載されました

タマカイに関する学芸員の瀬能のコメントが新聞に掲載されました

2018年10月4日更新

学芸員の瀬能によるタマカイに関するコメントが、2018年9月24日付けの西日本新聞長崎版に掲載されました。

この記事は、五島列島福江島の南西部に位置する玉之浦で漁獲された巨大タマカイについて報じたものです。タマカイはハタ科マハタ属の1種で、紅海やハワイ諸島を含むインド・太平洋海域に広く分布し、岩礁やサンゴ礁など浅い海に生息する魚です。

“タマカイ”とはパラオでのハタ科魚類の総称ですが、現在ではEpinephelus lanceotatusに適用される標準和名として認知されています。成長すると全長2メートルを越える大型の肉食魚で、遊泳中の人を見ると猛烈な勢いで襲いかかるとされ、パラオではサメよりも恐れられているという逸話があります。

しかしながら、成魚は食用魚として、幼魚は観賞魚としての利用価値が高いことから、乱獲の影響を受け、国際的には絶滅危惧II類相当の絶滅危惧種とされています。また、国内でも繁殖の証拠となる幼魚が記録されておらず、近年では成魚の出現は僅少かつ局所的なことから、事実上の絶滅種の可能性も示唆されています。そのため、2017年3月に環境省が発表した海洋生物レッドリストにおいて、絶滅危惧IA類に選定されました。

一方、台湾から輸入された種苗を使ったタマカイの養殖がいくつかの地域で試みられており、最近では養殖場から逸出したと思われる個体が自然水域で記録されるようになりました。遺伝的な集団構造が明らかにされていない状況下での逸出は、遺伝的かく乱を生じさせる可能性があり、早急な調査が必要です。

なお、タマカイの写真は、瀬能のページに掲載していますので、ぜひご覧になってください。