魚の会(うおのかい) 令和7年度第1回講演会「サケ科魚類に魅せられて」
魚類の飼育に興味を持ち関東を中心に採集、観察に熱中した私にとって、岩手に赴任して初めて、秋に河川に遡上するサケの大きさの多様性には大きな驚きでした。温帯以南の魚類では産卵群を構成する個体の大きさには大きな変異はありませんが遡上したサケのオス親の大きさは体長50cmから100cm,体重では1kgから10kgと極めて大きな変異が観られたのです。その変異の意味を追求すべく毎年サケの捕獲場に通いました。サケを調べると近年のサケ・マス類にも興味が広がり、結果的にはロシア、アラスカ、モンゴル、ヨーロッパと調査域を広げることとなりました。サケ・マス類の繁殖集団に見られる個体サイズの多様性は環境変動に対する保障機構であるというのが私の結論です。今回はその結論に至るまでの道のりをご紹介いたします。

カラフトマス 北海道羅臼町
KPM-NR 23620(大塚幸彦 撮影)

サケ 岩手県・久保川
KPM-NR 59752(瀬能 宏 撮影)

イワナ 岩手県・馬渕川
KPM-NR 219771(田中 篤 撮影)
講師:井田 齊(いだ ひとし)氏(北里大学名誉教授)
1940年東京都生まれ。北里大学名誉教授。東京大学農学系研究科博士課程修了。農学博士。東京大学総合研究博物館、北里大学水産学部、(株)プレック研究所を経て現在に至る。専門は、魚類分類学、魚類生態学。岩手県では、河川に回帰したシロザケの成熟年齢・体型の多様性に感銘を受け、その後サケ科魚類の分類・生態に興味を深めた。趣味はスキューバダイビング、テニス、碁、自動二輪を乗り回すこと。主な著書に「魚の辞典」(共著、東京堂出版)、「日本産魚類大図鑑」(共著、東海大学出版会)、「現代の魚類学」(共著、朝倉書店)、「食材図典」(共著、小学館)、「サケ・マス魚類のわかる本」(共著、山と渓谷社)、小学館の図鑑NEO魚(監修・著、小学館)、魚はすごい(小学館)など多数。
開催日 | 2025年5月11日(日曜) |
---|---|
場所 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 1階 西側講義室 |
開催時間 | 14時30分から15時30分 |
申し込み | 事前申し込み不要・当日受付 |
料金 | 無料 |
主催 |
魚の会(うおのかい) 「魚の会(うおのかい)」は、研究や産業、趣味を通じて「魚」に携わる人々が気軽に集い、親睦をはかり、あわせて水圏の環境保全に寄与することを目的として活動しています。第一線で活躍されている著名な先生をお招きして開催している年4回の講演会には、どなたでも自由に参加できます。お知り合いの方もお誘い合わせの上、お気軽にご参加ください。 |
問合せ先 |
神奈川県立生命の星・地球博物館 担当:和田英敏 電話:0465-21-1515 e-mail:wada.kpm-ni@nh.kanagawa-museum.jp |