+2℃の世界Home | 博物館Home
+2℃の世界・縄文時代に見る地球温暖化・2004年12月18日(土曜)から2005年2月27日(日曜)

■3.下末吉期←|→■5.貝化石を読む

+2℃の世界
縄文時代に見る地球温暖化

縄文海進 −鶴岡八幡宮下まで海−

  鎌倉の旧市街地は滑川の低地に広がっています。低地は二方を山に囲まれ、南が由比ケ浜の海に面しており、鶴岡八幡宮を頂点とする、ほぼ二等辺三角形となっています。この滑川低地には砂と泥の軟弱な沖積層が積もっていて、そこには縄文海進を示す保存の良い貝化石が含まれています。

 以前、八幡宮境内に県立近代美術館が建設されたとき、地下から大量の貝化石が出ました。さらに鎌倉市国宝館の資料館ができたときにも、貝化石や昔の海岸を示す地形がみつかりました。これらの情報をもとに市街地の縄文海進最盛期(六千年前)の地形を復元すると、滑川低地は内湾となっていたことが分かりました。

 湾口が由比ケ浜で幅約二キロ、湾奥が鶴岡八幡宮の東方に達していました。湾奥までの長さは約三キロとなり、湾口の広いわりに奥行きの浅い開いた入り江でした。湾の最も奥が鎌倉宮付近に達し、干潟となっていて、ハマグリやシオフキ、イボキサゴなどが生息していました。

 湾奥に近い鶴岡八幡宮境内では、大イチョウのある石段の下まで海が迫り、波が打ち寄せるきれいな砂浜となっていました。そこには現在の相模湾沿岸には生息していないタイワンシラトリやシオヤガイ、ヒメカニモリなど熱帯から亜熱帯の暖かい海にすむ貝が生息していました。

 また、鎌倉大仏のある長谷の谷は幅の狭い入り江となり、ここにも泥層が厚く積もっていることが大仏の地下から明らかになりました。この泥層からも熱帯にすむカモノアシガキのほか、イボウミニナ、カワアイなどの貝化石がみつかっています。

(県立生命の星・地球博物館名誉館員・松島 義章 )

鎌倉鶴岡八幡宮の境内。六千年前の海岸線は石段の下に達していた。

鎌倉鶴岡八幡宮の境内。6000年前の海岸線は石段の下に達していた


※ 2005年1月23日に、神奈川新聞に掲載された記事を再録しました。

(C)copyright Kanagawa Prefectural Museum of Natural History 2004. All rights reserved.