2012年度特別展「大空の覇者-大トンボ展-」関連連載記事

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「トンボの世界 古来から身近な存在」(2012年7月13日掲載記事)

高温多湿の今の時期は、昆虫たちが最も生き生きとする季節でもある。

水田という湿地環境とともに生きてきた私たちは、水辺の生き物とは密室な関係を持ってきた。そんな日本人にとって身近な昆虫だったのがトンボ。 日本人のトンボ好きは筋金入りで、日本書紀では、神武天皇が日本を秋津島(あきつしま:あきつはトンボの古名)と呼ぶが、これは国土を一望して「トンボのようだ」と言ったことが語源とされる。 さらに古事記でも、雄略天皇の腕をかんだアブをトンボが食べ、これをたたえた天皇が「あきつ」を国名としたとされている。もしかすると、国名を「トンボ」とする世界的にもユニークな存在になれたかもしれないと思うと、少し惜しい気もする。

トンボは肉食の昆虫。幼虫期には水中にすむ水生昆虫で、一般に「ヤゴ」と呼ばれる。羽化はヤゴの形からそのまま脱皮して行われる。成虫の生活の中心は水辺だが、飛翔(ひしょう)能力に恵まれており、主な生活圏は空中だ。また渓流、大河、湖、池沼、湿地など実に多様な水環境に適応している。日本からは200種を超えるトンボが記録されているが、小さな国土の割には、トンボの大変豊富な地域と言うことができる。

(県立生命の星・地球博物館主任学芸員 苅部治紀)

「大空の覇者~大トンボ展」が14日から11月4日まで県立生命の星・地球博物館で開催される。その生態、環境問題や文化のとの関わりなど、トンボの世界をさまざまな角度から紹介する。

※こちらは2012年7月13日に神奈川新聞に紹介されたものです。

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