2012年度特別展「大空の覇者-大トンボ展-」関連連載記事

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「世界のトンボ(1)種類多く全貌見えず」(2012年7月27日掲載記事)

世界では現在までに約5900種類ものトンボが記録されている。しかし、特に東南アジアや南米には一体どの程度の種類がいるのかわかっていない。例えばベトナム。 1990年代以降は外国人も旅行することができるようになり、これまで10地点ほどで調査したが、この中で私が名前を付けた新種だけでも25種類余り、さらに20種ほど未登録のものが手元にある。 たった1人が行ったわずかな調査でもこの結果。 全貌が見えないというのがわかるだろう。

これまで実施した海外調査では、多くの現地の人に助けてもらった。あるとき、中国国境に近いベトナムの山岳民族の家に泊めてもらったが、言葉がほとんどわからない私を歓迎し、どぶろくをごちそうしてくれた。

また、ヘビ(ハブの仲間の毒蛇)をその家に持ち帰ったところ、すぐにさばいて、その血を酒で割り、「捕獲した人に権利がある」と、強精剤として飲まされた。 さらに調理したその肉を食べさせてくれた。 ベットに潜むノミや南京虫にやられたが、思い出すだけでも懐かしく、得難い経験だった。

しかし今、世界中のトンボたちに危機が迫っている。 特に東南アジアと南米では顕著だ。 過剰な森林伐採により原生林は年々姿を消していき、原生林にしかすめないトンボたちは、訪れるたびに姿を消している。 その原因の多くは日本向けの木材チップであることも心にとめておきたい。

(県立生命の星・地球博物館主任学芸員 苅部治紀)

「大空の覇者~大トンボ展」が11月4日まで県立生命の星・地球博物館で開催されている。

※こちらは2012年7月27日に神奈川新聞に紹介されたものです。

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