形成史からテフラを見る 新期カルデラの形成

Hk-TP(東京軽石,Y-76)

降下軽石、火山灰層。細かい降下ユニットが識別され、最下部に褐色火山灰層がある。その上の降下軽石層中にも上から約 1/5 ぐらいの層準に褐色火山灰層がある。この火山灰層から上の軽石層は比較的淘汰が悪く、風化すると下部が灰色、上部が橙色を呈するが、大磯丘陵内の軽石流堆積物を伴う堆積物では、この部分を欠く場合がある。この火山灰層より下位の軽石層は黄白色を呈し、下部に細粒のユニットが2つ、上部に粗粒なユニットが2 つないし 3 つありこれらの間には岩片・鉱物に富む細粒な部分が 3 ないし 4 層準あるが、区分方法は研究者間で統一されていない。大磯丘陵西部の大井町赤田では層厚2m、最大粒径 11cm、伊勢原市高森では層厚 70cm、最大粒径 5cm(笠間・山下, 2005b)、横浜市泉区岡津町では層厚 54cm、最大粒径 2cm(笠間, 2006)。軽石流堆積物は笠間・山下(2005b)によると、箱根山麓から大磯丘陵内ではシルトサイズ以下の細粒火山灰粒子に富んだ塊状軽石流堆積物が多様なフローユニット構成で堆積している。平塚市万田と伊勢原市高森を結んだ線より東側では、その上部に降下堆積物をはさんで細粒火山灰粒子に枯渇し、ラミナが発達した成層軽石流堆積物が堆積し、横浜市保土ヶ谷区まで分布する。横浜市泉区新橋町では塊状軽石流堆積物の層厚3m、最大粒径2.5cm、成層軽石流堆積物は層厚1.4m、最大粒径1.2cm。一方、三浦半島先端城ヶ島にも成層した軽石流堆積物(層厚 24cm、最大粒径 0.6cm、最下部以外は細粒火山灰粒子に枯渇する)があり、この堆積物は海を渡ってきた可能が高い。新期(武蔵野)ローム層に含まれる。町田・新井(2003)によると海洋酸素同位体ステージ 4 の 60ka〜65ka の噴出物である。

Hk-TP(東京軽石,Y-76)露頭写真
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スペ10

露頭写真:神奈川県伊勢原市高森(2005.5)

鉱物写真:TPは神奈川県平塚市上吉沢(2004.10),T(pfl)は平塚市土屋(2004.10)
(1)TP-1,2 (2)TP-3 (3)TP-4
(1)TP-1,2 (2)TP-3 (3)TP-4
(4)TP-5 (5)TP-6 (6)TP-7
(4)TP-5 (5)TP-6 (6)TP-7
(7)TP-8 (8)T(pfl)-1 (9)T(pfl)-2
(7)TP-8 (8)T(pfl)-1 (9)T(pfl)-2
(10)T(pfl)-a (11)T(pfl)-c (12)T(pfl)-d
(10)T(pfl)-a (11)T(pfl)-c (12)T(pfl)-d
(13)T(pfl)-e (14)T(pfl)-f  
(13)T(pfl)-e (14)T(pfl)-f  

箱根東京/Hk-TPおよび軽石流/Hk-T(pfl)(町田・新井, 1992)
他の名称/記号 東京浮石土(原田, 1943)、東京浮石層(貝塚・谷戸, 1953)、ハムパミス(関東ローム研究グループ, 1958)、ガサパミ(成瀬,1963)、P(軽石流)(久野 久, 1952)、箱根新期軽石流(町田・森山, 1968)、TPおよびPy-T(町田, 1971a)、TPfl(新井ほか, 1977)、Y-76およびY-77(上杉ほか, 1983)
分布(露頭) 小田原市久野星山、平塚市土屋遠藤原、伊勢原市高森、横浜市泉区など
推定体積  OPflからTPflまで14km3(Kuno, 1953)、TPについて8.4km3(町田, 1971a)、
TPについて約5km3(町田, 1977)、TPとT(pfl)それぞれ10〜100km3(町田・新井, 2003)
鉱物の特徴 TP: opx>cpx≧mt>ol、opx(γ)1.708-1.713(1.710)、1.706-1.711(1.708)、1.703-1.708(1.705)
(新井ほか, 1977)

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