魚の会講演会
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魚の会(うおのかい) 平成24年度第1回講演会 「シーボルト以前にヨーロッパへ渡った日本産魚類資料」

魚の会(うおのかい) 平成24年度第1回講演会 「シーボルト以前にヨーロッパへ渡った日本産魚類資料」

日程:2012年5月20日(日曜)

魚類を含む日本産動植物標本は、長崎出島のオランダ商館医として日本に滞在したドイツ人のシーボルト(1796~1866)によるものが有名で、そのコレクションは現在でもオランダに所蔵されている。リンネ式の分類体系に基づく邦産動植物の記載・報告はリンネの門弟でもあり、同じくオランダ商館医として日本に滞在したスウェーデン人のツュンベリー(1743~1828)によるものの他、日本に滞在しなかったもののオランダ商館を通じて得られた標本を元にしたオランダ人のホッタイン(1720~1798)による報告もあった。ホッタインの使用した標本は現在の所在を確認することはできないが、ツュンベリーの集めた標本はスウェーデンのウプサラ大学に残されており、これまでに確認されたタイプ標本を含む魚類標本について紹介する。

これら出島のオランダ商館由来のものとは異なる魚類標本が1804~1805年の半年間長崎に滞在したロシアのクルゼンシュテルン指揮の調査船によって持ち帰られている。このロシア船にはチレシウス(1769~1857)とラングスドルフ(1774~1852)の2名の博物学者が乗船しており、チレシウスの描いた長崎産魚類図は調査報告書(アトラス)に印刷使用されている。ラングスドルフ自身は直接研究を行なわなかったものの、集めた魚類標本の多くは1820年にベルリンへ運ばれ、現在ベルリン自然史博物館で保存されている。このベルリン標本はフランスのキュビエ(1769~1832)とバレンシエンヌ(1794~1865)が有名な「魚の博物誌(全22巻、1828~1850)」を執筆するのに使用され、スズキやカサゴなど著名な魚種がその時に命名されている。現在ベルリンに残されているタイプ標本を含む日本産魚類標本についても紹介する。

なお本講演に際して共同研究者である滝川祐子さん(香川大学農学部)には多くの資料を提供して頂きました。記して感謝します。

講師:吉野 哲夫(よしの てつお)先生(海洋博覧会記念公園管理財団総合研究センター研究顧問)

1945年生まれ。京都大学で日本最高の魚類分類学者だった故松原喜代松教授に師事。沖縄へ移り住み、琉球大学でサンゴ礁性魚類の分類や生態を研究するとともに多数の学生を育てる。現在は(財)海洋博覧会記念公園管理財団総合研究センター研究顧問。

編著書に「魚類図鑑:南日本の沿岸魚」、「日本産魚類大図鑑」、著書に「日本産魚類検索:全種の同定」、「琉球の自然史」、「沖縄釣魚図鑑」などがある。新種記載や分類学的再検討など魚類の学術論文多数。近年では古今東西の魚類学史について精力的に研究を進めており、その知識の幅広さは傑出している。

開催日 2012年5月20日(日曜)
場所 神奈川県立生命の星・地球博物館 1階西側講義室
開催時間 14時から16時(途中で休憩を挟みます)
参加方法 当日受付
料金 無料
主催

魚の会(うおのかい)

「魚の会(うおのかい)」は、研究や産業、趣味を通じて「魚」に携わる人々が気軽に集い、親睦をはかり、あわせて水圏の環境保全に寄与することを目的として活動しています。第一線で活躍されている著名な先生をお招きして開催している年4回の講演会には、どなたでも自由に参加できます。お知り合いの方もお誘い合わせの上、お気軽にご参加ください。

問合せ先 神奈川県立生命の星・地球博物館 担当:瀬能 宏
電話:0465-21-1515 e-mail:senou@nh.kanagawa-museum.jp