2014年度特別展関連「どうする?どうなる!外来生物」 連載記事

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「どうする?どうなる!外来生物 9. 止まらない新たな侵入」

外来種問題は簡単に解決できるものではなく、すでに問題化している種の対応だけでも手いっぱいなのが実情であるが、毎年のように新たな外来種が報告されている。ここでは、昆虫類における、ごく最近報告された国外からの外来種をを紹介する。

昨年秋に初めて確認されたのがムシャクロツバメシジミである。台湾や中国原産で、名古屋市近郊の河川敷で発見された。近縁種との交雑の心配があり、侵入初期であることから、駆除対策が実施されている。この他にも中部地方ではニューフェイスの報告が多く、ムネアカハラビロカマキリ(在来のハラビロカマキリを駆逐)、タケクマバチ(タケ類に営巣、地域によっては優占種)などがあり、いずれも急速に分布を拡大中である。昨年埼玉県で確認されたクロジャコウカミキリは、サクラの並木を加害している。海外では果樹の害虫としても著名な種である。

こうした新たな外来種は、人間が定着に気づいた時には拡散が進行しており、駆除を開始しても手遅れであることが多い。水際での検疫体制の強化を実施しないと、物資移動のグローバル化が顕著な状況から日本の生物を守ることは困難である。

昨年秋に名古屋市近郊で初めて確認されたムシャクロツバメシジミ(矢後勝也さん撮影)

昨年秋に名古屋市近郊で初めて確認された
ムシャクロツバメシジミ(矢後勝也さん撮影)

(当館学芸員 苅部 治紀)

※こちらは2014年9月12日付け神奈川新聞に掲載された記事の内容を紹介しています。

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