魚の会(うおのかい) 令和7年度第3回講演会「旅する魚類学:マングローブ編―ホシマダラハゼにかかった曇りと対峙して―」
魚類は世界中のあらゆる環境に生息していますが、その多様性やそれを生みだす仕組みについての未解明の謎はまだ沢山残っており、私はそんな魚たちの不思議を世界を旅して調べています。その中の思い出深いものの一つに「曇ったホシマダラハゼ問題」がありました。"ホシマダラハゼ"は琉球列島以南のマングローブに生息する大型の美麗種で、長らく世界で1種だけというのが定説でした。ところが本種を夢見て琉球大学に入った私がいつも見るのは体に星斑模様が無い、曇り空みたいな個体ばかり...ずっとモヤモヤしていた頃参加した神奈川県立生命の星・地球博物館での博物館実習で本種の研究は風雲急を告げ、その後の離島での新型の発見や国際的な競争、偉大な先達の助けなど、数々の苦難と喜びを経て、2023年に日本から2新種の記載に至りました。今回の講演ではそんなホシマダラハゼ属新種記載の裏話や現在進行中の新たな問題を中心にマングローブ性魚類研究の奥深さについてお話します。(小林)

小林博士が対峙した「闇」
(正体は講演会で)
KPM-NR 239121,小林大純氏撮影

ホシマダラハゼ
KPM-NR 54201,鈴木寿之氏撮影

小林博士が対峙した「雲」
(正体は講演会で)
KPM-NR 225569,小林大純氏撮影
講師:小林大純(こばやし ひろずみ) 千葉県立中央博物館分館 海の博物館 研究員
1993年兵庫県生まれ。琉球大学理工学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。国立科学博物館学振ポスドク研究員、千葉県立中央博物館研究員を経て2025年度から現職。専門は動物分類学および生態学(魚類)。カワアナゴ属魚類を中心に洞窟生物の自然史研究を続ける傍ら、ノコギリハゼ科、コモチサヨリ科、メダカ科などの分類にも取り組んでいる。小学生の頃、メダカの飼育を通して魚好きの道へ。高校〜大学時代は野外採集にハマり、タナゴやヨシノボリを追いかけて西日本や東アジアを旅した。大学院では「世界のメダカ研究室」に入り、以降スラウェシ島を中心に東南アジアを主なフィールドにしている。著書に「図鑑NEO メダカ・金魚・熱帯魚」(分担執筆、小学館)。
開催日 | 2025年11月16日(日曜) |
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場所 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 1階 西側講義室 |
開催時間 | 14時から15時 |
申し込み | 事前申し込み不要・当日受付 |
料金 | 無料 |
主催 |
魚の会(うおのかい) 「魚の会(うおのかい)」は、研究や産業、趣味を通じて「魚」に携わる人々が気軽に集い、親睦をはかり、あわせて水圏の環境保全に寄与することを目的として活動しています。第一線で活躍されている著名な先生をお招きして開催している年4回の講演会には、どなたでも自由に参加できます。お知り合いの方もお誘い合わせの上、お気軽にご参加ください。 |
問合せ先 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 担当:和田英敏 電話:0465-21-1515 e-mail:wada.kpm-ni@nh.kanagawa-museum.jp |