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学芸員の瀬能による南の海の魚の越冬についてのコメントが新聞に掲載されました

学芸員の瀬能による南の海の魚の越冬についてのコメントが新聞に掲載されました

2020年6月23日更新

 

学芸員の瀬能による南の海の魚、すなわち熱帯・亜熱帯性魚類の伊豆半島沿岸における越冬についてのコメントが5月15日付け「朝日小学生新聞」に掲載されました。近年、相模湾を含む伊豆半島の沿岸では、高水温期に流れ着いた熱帯・亜熱帯性魚類が越冬する事例が増加しています。今回の記事で学芸員の瀬能は冬場の水温が昔よりも高くなっていることが原因であると解説しました。以前であれば水温が一気に低下する12月から1月上旬にかけてほとんどの熱帯・亜熱帯性魚類は死滅してしまい、最も水温が低下する2月を超えて生き延びるものはいませんでした。ところが近年ではそうした魚たちの低温致死限界である15度付近の水温を下回らない冬が続いているのです。なぜ海水温が上昇傾向にあるのかについては、地球温暖化や暖冬、黒潮の大蛇行による暖かい海水温の供給など複数の要因が関係していると考えられています。このまま海水温の上昇傾向が続くと、いずれ定着する熱帯・亜熱帯性魚類が一気に増加し、魚類相は大きく変化すると予想されます。ただし、それは温帯性魚類の衰退を直ちに物語るものではありません。なぜなら、今よりも温暖であった縄文海進と呼ばれる時代においても、縄文人たちは熱帯・亜熱帯性魚類ではなく、スズキやマダイなどの温帯性魚類を食べていたことがわかっているからです。寒帯・亜寒帯性魚類は衰退するものも出てくるでしょうが、温帯性魚類の中には温暖化によって逆に活性が増すような魚もいるのではないかという視点で魚類相の変化を捉える必要があるでしょう。

 

 

アザハタの幼魚

アザハタの幼魚 1999年1月24日 静岡県大瀬崎 水深 17 m 御宿昭彦氏撮影(KPM-NR 27914)
当時は2月を超えて生き延びることはなかった

 

アザハタの幼魚

アザハタの幼魚 2019年3月2日 静岡県大瀬崎 水深9 m 山本 敏氏撮影(KPM-NR 206259)
この個体は撮影日から越冬したことがわかる

 

アザハタの成魚

アザハタの成魚 KPM-NI 37904 沖縄県八重山諸島産 瀬能 宏撮影(KPM-NR 108340)

 

    

KPM-NRは当館の魚類画像資料であることを示す記号です。
KPM-NIは当館の魚類標本資料であることを示す記号です。