学芸員の瀬能が新種の魚を共同発表しました
2020年12月17日更新
学芸員の瀬能がオーストラリアの魚類研究者たちと共同で、ベラ科オグロベラ属Pseudojuloidesのオトヒメベラの分類学的検討を行い、これまで1種とされていたものが2新種を含む種群であることを解明しました。この研究成果はアメリカ魚類両生爬虫類学会が発行する国際学術誌『Copeia』の108巻3号(オンライン版:2020年10月9日発行)に掲載されています。オトヒメベラは従来、オーストラリアの東海岸とニュージーランド、オーストラリアの西海岸、そして日本の3海域に分かれて分布する温帯性のベラ科魚類で、熱帯域には分布しないことから反熱帯分布の一例と考えられてきました。オトヒメベラには1977年に与えられたP. elongatusという学名が長らく適用されてきましたが、このたび、3海域の標本について形態や色彩に遺伝子の情報も加えて詳しく検討した結果、P. elongatusはオーストラリアの東海岸とニュージーランドに固有な種であることがわかったのです。そこでP. elongatusを再記載するとともに、オーストラリアの西海岸と日本の個体群にはそれぞれP. crux、P. paradiseusという新しい学名を与えました。なお、オトヒメベラの学名の基準となった相模湾産の標本(ホロタイプ;写真1)は当館に保管されています。
写真1. オトヒメベラPseudojuloides elongatusの雄(ホロタイプ, KPM-NI 43448)
写真2. オトヒメベラPseudojuloides elongatusの雌(パラタイプ, KPM-NI 43449)
※KPM-NIは当館魚類資料であることを示す記号です。
論文情報
Tea, Yi-Kai, Anthony C. Gill and Hiroshi Senou. 2020. Two new species of Pseudojuloides from Western Australia and southern Japan, with a redescription of Pseudojuloides elongatus (Teleostei: Labridae). Copeia, 108(3): 551-569.(PDF/2MB) DOI: 10.1643/CI-19-316