魚の会(うおのかい) 平成28年度第3回講演会 「コーラルフィッシュから深海魚まで、見て歩き。」
日程:2016年11月13日(日曜)
下関で生まれ育ち、地元の水産大学校を卒業して石川県金沢市の小高い山の天辺にあった小さな水族館の技術者として社会への第一歩を踏み出した。当時から上司であられた鈴木克己さんに研究する技術者のあり方を教わった。鈴木克己さんの後を追うようにして1970年に東海大学の海洋科学博物館へ転職し、建設段階からほぼ5年間さらなるご指導を仰いだ。黄色いキンチャクダイ科の幼魚を飼育してシテンヤッコに変化する現象をとらえ、未知であった幼魚の特徴を明らかにしたり、カミナリベラとニジベラを隔離飼育したことで両種が同一種の雌雄であることを証明したり、恵まれた環境下で人の驚く現象をとらえて世に報告することの面白さを知った。
1975年秋には海洋研究所に配置転換されて助手となり、西表島に新設される分室の立ち上げに関わることとなった。憧れのサンゴ礁魚類に取り囲まれた2年半の任期中に採集した標本は700から800種に上る。1978年4月に清水の海洋研究所本部に帰任して初めて、研究することが本務となったので、西表島の魚類相研究をひとつの課題とし、約10年前に卒業研究で宿題を残しておいたミシマオコゼと混同した別種の存在を明らかにすることを皮切りに、ミシマオコゼ科魚類全体の分類学的研究も復活させた。しかし、どちらの研究も未完成のまま定年退職してしまった腑甲斐なさを恥じている。
現在は三保の浜辺の散歩を日課としているので、深海性魚類を含む様々な生物遺体の漂着に遭遇する。毎年必ず打ちあがるミズウオの斃死原因は何なのか?形態的2型は何を意味するか?春季に漂着する小型のイカの甲の本体は何なのか?などなど解明すべき謎は多い。ラブカやカグラザメ、アブラソコムツなどは漁獲投機物と考えられるが、小型深海生物のハダカイワシ類、ヨコエソ類、ムネエソ類、ショウジョウエビや発光性ツツイカ目は漁獲投棄か自然死か予測は付きかねる。原因考察は抜きにして時間の許す限り事象紹介にとどめたい。
講師:岸本 浩和(きしもと ひろかず)氏(元 東海大学海洋研究所助教授)
1943年生まれ(下関市)。下関水産大学校卒業。(株)金沢水族館→東海大学海洋科学博物館→東海大学海洋研究所。東海大の博物館までは飼育技術者として従事。1975-1978年の2年半は助手として研究所西表分室の立ち上げに関わる。1978年清水に帰任。講師・助教授として上記研究と並行して学生の教育を兼務。2015年定年。共著書:「日本産魚類大図鑑」(東海大出版会、1984)、「ニュージーランド海域の水族」(海洋水産資源開発センター、1990)、「日本の海水魚」(山と渓谷社、1997)、「FAO Species Identification Guide for Fishery Purposes, The Living Marine Resources of the Western Central Pacific」(FAO、1999)、「魚類学実験テキスト」(東海大出版会、2006)、「益田 一と日本の魚類学」(神奈川県立生命の星・地球博物館、2013)。
開催日 | 2016年11月13日(日曜) |
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場所 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 1階西側講義室 |
開催時間 | 14時から15時 |
参加方法 | 当日受付 |
料金 | 無料 |
主催 |
魚の会(うおのかい) 「魚の会(うおのかい)」は、研究や産業、趣味を通じて「魚」に携わる人々が気軽に集い、親睦をはかり、あわせて水圏の環境保全に寄与することを目的として活動しています。第一線で活躍されている著名な先生をお招きして開催している年4回の講演会には、どなたでも自由に参加できます。お知り合いの方もお誘い合わせの上、お気軽にご参加ください。 |
問合せ先 |
神奈川県立生命の星・地球博物館 担当:瀬能 宏 電話:0465-21-1515 e-mail:senou@nh.kanagawa-museum.jp |