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魚の会(うおのかい)平成27年度第1回講演会 「日本のメダカ、世界のメダカ」

魚の会(うおのかい)平成27年度第1回講演会 「日本のメダカ、世界のメダカ」

日程:2015年5月31日(日曜)

メダカは日本古来の淡水魚で、古くからペットや生物学分野の研究材料として日本人に親しまれてきました。「メダカをマウスのような高品質の実験動物にできないか」という大学院時代の指導教授のお声掛かりで私のメダカ研究が始まりました。1980年頃、ちょうど生化学や分子生物学の手法が生物の分類や系統解析に応用され始めた頃です。標本ではなく生きた材料が必要でしたので、日本各地からメダカを採集することから始めなければなりませんでした。同級生や先輩、親戚などを頼って、日本各地を歩き回り、生きたまま持ち帰りました。各地の系統を保存しながら遺伝子の解析を行ったところ、日本には二つの系統があることが分かりました。留学生や外国の知り合いにお願いして、中国や韓国のサンプルも得られました。その結果、大陸にも二つの系統があり、両方とも日本の系統とは異なることが判明しました。これらの「メダカ」のルーツを知ろうと、当時メダカの染色体の研究をしていた先生と一緒に、アジアに広く分布するメダカ近縁種と比較したところ、メダカ類(亜目)の中に占めるメダカの位置付けが分かってきました。メダカ類は東アジア産、南アジア産、スラベシ島産の3群に分類され、メダカは東アジアグループの一員であることが分かりました。現在、メダカは、ダツ目・メダカ亜目の唯一の科、メダカ科に位置付けられ、メダカ科には2属が含まれることになっていますが、私たちの分子系統解析は、メダカ類36種(候補を含む)すべてがOryzias属に含まれる可能性が出てきました。あるいは、上述した3属に分けるのが妥当かも知れません。今回は、メダカの系統分類の現状や、実験動物としての系統化のプロセス、メダカの系統化が生物学分野に与えたインパクトなどについてお話させていただきます。

講師:酒泉 満(さかいずみ みつる)氏

1953年茨城県生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了。理学博士。(財)東京都臨床医学総合研究所研究員を経て、新潟大学教授。専門は遺伝学。毎日近くの田んぼで魚採りをしていた小学生が、いろいろな偶然が重なってメダカの遺伝学を志す。主な著書に「メダカ」(偕成社、1981年)、「日本の海水魚類―その分布、変異、種分化をめぐって」(東海大学出版会、1987年)、「メダカの生物学」(東京大学出版会、1990年)、「動物の多様性」(培風館、2007年)、「ぜんぶわかる!メダカ」(ポプラ社、2015年)(いずれも共著)がある。

開催日 2015年5月31日(日曜)
場所 神奈川県立生命の星・地球博物館 1階西側講義室
開催時間 14時30分から15時30分
参加方法 当日受付
料金 無料
主催

魚の会(うおのかい)

「魚の会(うおのかい)」は、研究や産業、趣味を通じて「魚」に携わる人々が気軽に集い、親睦をはかり、あわせて水圏の環境保全に寄与することを目的として活動しています。第一線で活躍されている著名な先生をお招きして開催している年4回の講演会には、どなたでも自由に参加できます。お知り合いの方もお誘い合わせの上、お気軽にご参加ください。

問合せ先 神奈川県立生命の星・地球博物館 担当:瀬能 宏
電話:0465-21-1515 e-mail:senou@nh.kanagawa-museum.jp