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ヨコヅナイワシのタイプ標本の恒久的保管に当館が協力

ヨコヅナイワシのタイプ標本の恒久的保管に当館が協力

2021年3月24日更新

2021年1月25日、セキトリイワシ科の最大種であり、駿河湾深部のトップ・プレデターでもあるヨコヅナイワシが、オーストラリア博物館のJan Yde Poulsen博士を筆頭とする4名の研究者により新種として発表されました(JAMSTEC プレスリリース)。全長1 mを越える大型深海魚の新種発見は、発表されるやいなやマスコミやインターネットを通じて大きな注目を集めました。この魚の新種記載には4個体の標本が用いられており、当館は3個体あるパラタイプ※の内1個体(図1~3)の恒久的保管を担うことになりました。この魚は「イワシ」と言っても食用として馴染み深いニシン目のマイワシやカタクチイワシとはまったく異なるニギス目に分類されています。セキトリイワシ科の代表種の標準和名「セキトリイワシ」(図4)は、日本の魚類学の父と言われる田中茂穂博士により1913年に命名されました。関取の中でも最強の横綱が現れるまで100年以上、多様性の解明には時間がかかることを改めて認識させられました。

図1 ヨコヅナイワシ(体側面;液浸標本※) KPM-NI 43548 パラタイプ 駿河湾産 体長104.0 cm

高精細画像(7MB)

 

図2 ヨコヅナイワシ(頭部;液浸標本) KPM-NI 43548 パラタイプ 駿河湾産 体長104.0 cm

高精細画像(20MB)

 

図3 ヨコヅナイワシ(口部;液浸標本) KPM-NI 43548 パラタイプ 駿河湾産 体長104.0 cm

高精細画像(17MB)

 

図4 セキトリイワシ(体側面;鮮時) KPM-NI 10359 駿河湾産 体長99.8 mm

 

参考資料

Fujiwara, Y., M. Kawato, J. Y. Poulsen, H. Ida, Y. Chikaraishi, N. Ohkouchi, K. Oguri, S. Gotoh, G. Ozawa, S. Tanaka, M. Miya, T. Sado, K. Kimoto, T. Toyofuku and S. Tsuchida, 2021. Discovery of a colossal slickhead (Alepocephaliformes: Alepocephalidae): an active‑swimming top predator in the deep waters of Suruga Bay, Japan. Scientific Reports. DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-020-80203-6

 

※パラタイプとは、学名を担う唯一の標本であるホロタイプの予備的役割を果たす標本のことで、新種記載時に指定されるタイプ標本の一種です。

※液浸標本とは、ホルマリンにより防腐処理を施した後、アルコールなどの保存液に浸された状態で保管されている標本のことです。

※KPM-NIは当館の魚類標本資料であることを示す記号です。