学芸トピックス
トップページ
新着情報
学芸トピックス
特別研究員の和田と学芸員の瀬能が日本初記録のゴンベ科魚類を報告しました

特別研究員の和田と学芸員の瀬能が日本初記録のゴンベ科魚類を報告しました

2021年12月10日 更新

特別研究員の和田と学芸員の瀬能は伊豆大島のダイビングサービス・チャップの星野 修氏と共同で、これまで南半球にのみ分布するとされていたゴンベ科オキゴンベ属の1種であるCirrhitichthys guichenoti が日本に分布することを発見し、その分布状況を日本魚類学会の和文誌『魚類学雑誌』に論文として発表しました。また、この論文中で伊豆大島から得られた1標本に基づき、新標準和名を“キリンゴンベ”と命名しました。この和名は面長の頭部と体の斑紋が哺乳類のキリンを連想させることにちなみます。キリンゴンベは主に水深50 m以深の入り組んだ岩礁に生息する最大体長10センチほどの小型の海水魚で、これまでにインドネシアおよび南アフリカ、南西インド洋の島嶼域からのみ記録されていました。本種の分布の北限はインドネシアのアロール諸島とされていたため、日本での記録は本種の北限を約5,000 km更新することになります。

キリンゴンベは2011年に伊豆大島から初めて確認され、その後小笠原諸島と伊豆半島東岸においても相次いで発見されており、現在に至るまで18件の観察例が得られています。全長3.5~10センチと様々な成長段階の個体が確認されていることから、本種の日本における再生産が示唆されます。本種が突如として北限を大幅に更新し日本に出現した理由は不明ですが、本種が分布する東インド諸島から卵や仔魚などの生活史初期の段階で、黒潮によって日本まで輸送されてきた可能性があります。

この報告に使用されたキリンゴンベの標本と写真資料は、当館の収蔵資料データベースおよび魚類写真資料データベースに登録されています(写真)。

 

論文情報

和田英敏・瀬能 宏・星野 修.2021.伊豆大島から得られた北半球初記録のゴンベ科魚類Cirrhitichthys guichenoti キリンゴンベ(新称)の記載と日本における生息状況魚類学雑誌,DOI: https://doi.org/10.11369/jji.21-030

 

キリンゴンベ

KPM-NI 29454, 標準体長55.7 mm
伊豆大島 (瀬能 宏撮影)

 

キリンゴンベ

KPM-NR 159311, 全長約50 mm
小笠原諸島兄島 (森下 修氏撮影)

 

キリンゴンベ

KPM-NR 213615, 全長約35 mm
静岡県伊豆海洋公園 (鈴木美智代氏撮影)

 

※KPM-NIは当館魚類標本、KPM-NRは当館魚類写真資料であることを示す記号です