学芸トピックス
トップページ
新着情報
学芸トピックス
学芸員の瀬能が新聞で酒匂川水系のメダカが直面する危機についてコメントしました

学芸員の瀬能が新聞で酒匂川水系のメダカが直面する危機についてコメントしました

2022年4月12日 更新

4月5日付け朝日新聞および同電子版に掲載された記事において、学芸員の瀬能が酒匂川水系のメダカが直面する危機についてコメントしました。日本のメダカ属にはミナミメダカとキタノメダカの2種が知られ、酒匂川水系のメダカは前者に分類されます。神奈川県では人間活動の影響によって生息環境が消失あるいは悪化したことで数を減らし、県版のレッドリストでは絶滅危惧IA類に選定されています。記事に取り上げられた小田原市の桑原・鬼柳地区は、在来メダカのまとまった個体群が生息する県内唯一とも言える場所です。記事では取り上げられていませんが、近年同地のメダカの遺伝子かく乱の危機が著しく高まっています。観賞魚店や道の駅などで販売されている品種改良された外来メダカが、在来メダカの生息地と同一の水系内から立て続けに見つかっています(参考資料)。もし両者の交雑によって遺伝的かく乱が大きく進行すれば、メダカの保全価値を著しく損ねることになります。湿地環境の維持・復元を行うだけでなく、よりもう一歩踏み込んだ保全措置を講じないと、神奈川県は後世に残すべき自然遺産を永久に失うことになりかねません。県在来のメダカが存続できるか否か、いよいよ待ったなしの状況に追い込まれたと言えるでしょう。

 

 受難が続く酒匂川水系のミナミメダカ 雄 KPM-NI 71442

 

※KPM-NIは当館の魚類標本の資料番号であることを示す記号です。

 

【参考資料】
自然科学のとびら Vol. 27, No. 4「絶滅危惧種にとどめ!?―最近の足柄平野の外来魚事情」

【参考記事】
朝日新聞デジタル