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特別研究員の和田と学芸員の瀬能が新種のハゼ科魚類に関する論文を発表しました

特別研究員の和田と学芸員の瀬能が新種のハゼ科魚類に関する論文を発表しました

2022年11月29日 更新

 

特別研究員の和田と学芸員の瀬能は、静岡県伊東市のダイビングショップ「さかなや潜水サービス」の高瀬 歩氏と共同で、ハゼ科ベニハゼ属(Gobiidae: Trimma)の新種であるイズベニハゼTrimma albicaudatumを相模湾西部に位置する伊豆海洋公園から発見し、その特徴と分布状況を日本魚類学会の英文誌『Ichthyological Research』に論文として発表しました。本種は水深60–100 mの岩場に生息する体長2センチほどの小型の海水魚で、これまでに日本の相模湾とフィリピンのマクタン島からのみ確認されています。学名の“albicaudatum”はラテン語で白い(albi-)尾部(caudatum)をもつことを表します。標準和名は本種が発見された伊豆にちなみます。

ベニハゼ属は種多様性が高いことが知られるハゼ科魚類の中でも特に高い多様性をもち、インドー西太平洋から現時点で112種が認められており、日本からはこのうち30種が知られています。しかし、ベニハゼ属にはいまだに多くの未記載種や隠蔽種が含まれることから総種数は過小評価されているといわれており、今なお種多様性の実態を把握するための分類学的研究が必要とされています。

この論文に使用されたイズベニハゼの標本と写真資料は、当館の魚類標本コレクションおよび魚類写真資料データベースに登録されています(写真)。

 

論文情報

Wada, H., W. Takase & H. Senou. 2022. Trimma albicaudatum, a new species of pygmygoby from Sagami Bay, Honshu, Japan (Teleostei: Gobiidae: Gobiinae). Ichthyological Research, DOI: https://doi.org/10.1007/s10228-022-00897-8

 

イズベニハゼ

KPM-NI 50326 ホロタイプ 標準体長18.0 mm 伊豆海洋公園 水深60 m 瀬能 宏撮影

イズベニハゼ

KPM-NR 226501 (= KPM-NI 50326) ホロタイプ 標準体長18.0 mm 伊豆海洋公園 水深60 m 高瀬 歩氏 撮影

イズベニハゼ

KPM-NR 229653 フィリピン諸島マクタン島 水深100 m 故白石拓己 氏撮影

※KPM-NIは当館魚類標本、KPM-NRは当館魚類写真資料であることを示す記号です。

※ホロタイプは学名の基準となる唯一の標本のことです。