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神奈川県大磯の海岸で発見されたイノシシ化石の論文が公表されました

神奈川県大磯の海岸で発見されたイノシシ化石の論文が公表されました

2022年12月16日 更新

2018年、古生物ボランティアの前田利蔵さんは大磯町西小磯の海岸で一つの化石を発見しました。愛媛大学の鍔本武久氏と学芸員の樽がこの化石を調べたところ、日本の新第三紀のイノシシ科としては7番目の標本であることが判明し、日本地質学会が発行する学術誌『地質学雑誌』に論文として公表しました。発見された標本はたった1本の臼歯で、それも1/3が欠けていましたが、イノシシ科の左下顎の第3臼歯であることがわかりました。また、その形がイノシシ類がもつ鈍頭歯型(bunodont)であること、歯冠の大きさ(歯冠幅:20.5 mm)などの特徴から、プロポタモコエルス・ヒオテリオイデス(cf. Propotamochoerus hyotherioides)に近い種類であると同定しました。この化石が発見された場所は、新生代新第三紀中新世の後半の約829万年前から557万年前までの間に堆積した大磯層という地層です。この地層は海岸に分布していますが、今回の化石の発見により、それが海側(古伊豆弧)ではなく、陸側(本州弧)からの堆積物であることが裏付けられました。

 

参照論文

Takehisa Tsubamoto and Hajime Taru, 2022. A new fossil specimen of the Suidae (Mammalia, Artiodactyla) from the upper Miocene Oiso Formation and a brief review of Neogene suids from Japan. Journal of the Geological Society of Japan, vol. 128, no. 1, p. 287–293.

 

写真:プロポタモコエルス・ヒオテリオイデス類似種(cf. Propotamochoerus hyotherioides)の化石(KPM-NNV 964).

 

咬合面: 上方が正面. スケール: 1 mm.

舌側面: 左方が正面. スケール: 1 mm.

頬側面: 右方が正面. スケール: 1 mm.

前方と舌側面のやや上方から. 

※KPM-NNVは当館の化石資料であることを示す記号です。