展示余話「ユーレイカ(わかったぞ)! ユウレイイカの姿勢」

ユウレイイカの展示の様子

博物館3階の神奈川展示室、深海生物のコーナーの写真です。上は1995年の開館時、下は2020年の臨時休館中の撮影ですが、違いがお判りですか?

生物を展示する場合には、姿かたちをきっちり整えた、人間で言えば「気をつけ」の姿勢で展示する方法と、普段の姿勢、いわば「休め」の姿勢を再現して展示する方法があります。無脊椎動物にとって「気をつけ」の姿勢とは、普通は頭を上に、腹を下にした姿勢であり、腕や脚を基準にはしないようです。イカの場合、眼や口のある部分が頭に、「胴」と呼ばれる部分が腹にあたるので、俗に「イカゲソ」と呼ばれる腕は自動的に上に配置されます。一方、近年の深海カメラの発達や、深海生物飼育技術の向上によって、これまで謎に包まれていたユウレイイカの生態が少しずつ明らかになってきました。すると、ユウレイイカは普段は腕を上に、ヒレを下にして海中を漂っていることがわかってきたのです。

つまり、ユウレイイカを展示する時の姿勢は「気をつけ」でも「休め」でも、わたしたちの思い込みとは反対だったのです。このことがわかったので、ユウレイイカを180度回転させ、上下を逆にする修正を施したのです。

(学芸員・佐藤武宏

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