展示余話「あなたはハシナガチョウザメを見たか!?」

当館には標本と画像を合わせて34万点余りの魚の資料が登録されています。その中でも特に学術的価値が高く、希少性や入手困難性、トピック性に加えて高い経済的価値をも併せ持つ、とっておきの魚がさりげなく展示されていることをご存じでしょうか?

それは中国の揚子江の固有種ハシナガチョウザメです!今から3,400~7,500 万年前に栄えたグループの生き残りで、「生きている化石」として有名であるだけでなく、最大全長7メートルに達する世界最大の淡水魚でもあります。2019年に発表された論文によると、この魚は1970年代には年間25トン ほどの漁獲があったそうですが、その後ダム建設や乱獲によって数を減らし、1993年には繁殖することができなくなり、2005年から2010年までの間に絶滅したと推定されました。つまり、今後この魚は博物館の標本でしか見ることができなくなってしまったというわけです。

ちなみに当館の剥製は1980年代に現地で入手したものを1995年の開館に合わせて購入したものです。この魚の剥製を惜しげもなく見ることができる博物館が当館以外のどこにあるのか、インターネットを使ってぜひ探してみてください。そうすれば自ずとその価値を理解していただけるでしょう。

参考資料
Zhanga, H., I. Jaric, D. L. Roberts, Y. He, H. Du, J. Wu, C. Wang and Q. Wei. 2019. Extinction of one of the world's largest freshwater fishes: Lessons for conserving the endangered Yangtze fauna. Science of the Total Environment, online. DOI: https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2019.136242

 

剥製の展示の様子

ハシナガチョウザメ 全長約2.2 m

(学芸員・瀬能 宏

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