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学芸員の展示余話

学芸員の展示余話

第41回「県民が作った緑の全戸籍?」

ジャンボブック展示室では、神奈川県植物誌調査会が編纂へんさんする『神奈川県植物誌』とその成果を紹介する1冊があります。開館当初には『神奈川県植物誌1988』とその成果を展示し、その後『神奈川県植物誌2001』に更新し、今回『神奈川県植物誌2018』の刊行を受け、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のための臨時休館中に2度目の更新をしました。

この更新作業中、以前、博物館に勤務されていた職員の「植物誌は戸籍なのか?」という質問を思い出しました。現在の神奈川県に分布する植物を調べたものとしては、「住民台帳」が近いような気もします。しかし、植物誌には環境の変化や人為的な要因により、県内からは姿を消した植物も記録に残されています。そうなると、過去にさかのぼって記録が残されている「戸籍」が近いように思います。また、海外からやって来た帰化植物も、県の植物相を構成する一員です。神奈川県の場合は、自生植物2,199種類に対し、帰化植物が1,036種類も記録されているのです。この中には一時的に記録され、その後記録がないものも含まれます。これらはどう扱えばいいでしょうか。悩ましい問題です。

さて、当館は臨時休館中ですが、本日3月23日から当面の間、ウェブにてご予約をいただいた方に限りご来館いただけるようになりました。詳しくは来館予約ページをご覧ください。

神奈川県植物誌調査会が編纂した『神奈川県植物誌1988・2001・2018』

(学芸部長・田中徳久

第40回「月球儀の表と裏」

月の、いつも地球に向いている半球を「月の表」、その反対側の地球からは直接見えない半球を「月の裏」とよびます。裏が見えないわけは地球を回る月の公転周期と月の自転周期が27.3日間と同じであり、いつも同じ面が地球に向いているためです。地球展示室にある月球儀は、ゆっくりと回っているので、普段は見ることができない月の裏側を見ることができます。

月を見て誰もが気がつくのは、黒っぽい部分と白っぽい部分があることでしょう。日本では、昔から黒っぽい部分をウサギのお餅つきに例えて親しんできました。黒い部分は、比較的平坦な地形をしているので「海」と呼ばれ、白い部分は高低差のある地形をしていることから「高地」と呼ばれています。色と地形の違いは、それぞれを作る岩石の種類が違うためです。黒い部分は約38億年から30億年前頃に噴出した玄武岩げんぶがん、白い部分は40億年よりも古い時代の斜長岩しゃちょうがんでできています。月の表面には、隕石いんせきの衝突によってできた大小無数のクレーターがありますが、よく見ると白い部分に密集していて、黒い部分には少ないことがわかります。このことから、隕石の衝突は、月の誕生直後に多く、38億年以降からは次第に少なくなってきたことを示しています。月の裏側には黒い部分がないことも特徴の一つです。

月のクレーターを最初に発見したのは、「地動説」を唱えたガリレオ・ガリレイです。ガリレオは1609年に自作の望遠鏡で月の観察をし、月の地形について報告をしました。日本でも、江戸時代に麻田剛立あさだごうりゅうという洋学者が、1778年にオランダ人から手に入れた反射望遠鏡を使って月面を観測して、地図を書き残しています。その業績を称えて小さなクレーターに「Asada」の名前がつけられています。

再開館したら、月球儀で月の表と裏の色や地形、クレーターの様子を比べてみてください。

月の表

月の裏

【参考情報】

国土地理院 月の地形図

「星界の報告」(ガリレオ・ガリレイ、岩波文庫)

「月に名前を残した男 江戸の天文学者 麻田剛立」(鹿毛敏夫、角川ソフィア文庫)

(館長・平田大二

第39回「トリケラトプスの歯」

ティラノサウルスなどの肉食恐竜の歯を見たことがある人は多いと思います。しかし、トリケラトプスの歯を見たことがありますか?

トリケラトプスを含む鳥脚類と呼ばれる植物食恐竜のグループには、ユニークな歯の持ち主がいます。一番有名なカモノハシ恐竜のデンタルバッテリー(第32話参照)に続いて、今回ご紹介するのはトリケラトプスです。トリケラトプスという名前は「3つの角を持つ顔」という意味ですが、歯もかみ合わせの面から見ると三角形をしています。下あごの歯では、舌側(写真の左側)にはっきりとしたりょうがあるためです(上あごの歯では、逆に頬側きょうそくに稜があります)。そして歯根にはこの稜がはまるように溝があるのです(写真の下部参照)。

歯根にある溝に次の歯の稜がはまってつながることで、トリケラトプスの歯は次々とスムーズに生え替わることができます。それはまるでロケット鉛筆※のようです。

※補足「ロケット鉛筆」:筆者が子どもの頃、流行した繰り出し鉛筆。芯が減ったら先端から抜いて尻へ差し込むと新しい芯が出てくるというものです。すぐにシャープペンシルに取って代わられ、無なくなったと思っていましたが、今でも売っていました!

左:トリケラトプスの歯(レプリカ3個)。同じレプリカを並べたのでぴったりとはくっつくいていないが、生きているときのあごの中では、次の歯が使っている歯の下にぴったりとくっついていました。中:ロケット鉛筆の中身。右:ロケット鉛筆。

(学芸員・大島光春

第38回「果実までもがトゲトゲのバラ」

サンショウバラ(バラ科バラ属)は淡いピンク色の花を咲かせるバラで、日本に自生するバラの中でも比較的大きな花をつけ植栽木として利用されることもあります。大きなものでは樹高は6 m位、幹の太さは10 cm位になります。名前の由来は、葉やトゲが山椒さんしょうに似ていることによると言われています。サンショウバラは、日本固有種で、箱根と富士山の周辺のみに分布します。箱根地域ではハコネバラとも呼ばれ、箱根町の花に指定されています。

バラ属の多くは果実を鳥に食べられることで種子を散布します。バラはトゲトゲのイメージがあると思いますが、日本に自生している野ばらの仲間の果実はトゲのないものがほとんどです。しかし、サンショウバラの果実には固いトゲがあります。トゲトゲした果実のサンショウバラがどのように種子を散布しているのかはよくわかっていません。

博物館の正面入り口向かって左側にサンショウバラが植えてあります。花や果実の時期は年によって変わりますが、昨年(2020年)は、花は5月上旬に咲き、5月下旬にはまだ青く未熟な状態ですがトゲトゲの果実が見られました。展示室と屋外、両方を見ていただくとサンショウバラをよりお楽しみいただけると思います。

神奈川展示室のサンショウバラの模型

サンショウバラの果実

(学芸員・石田祐子

第37回「博物館で世界昆虫めぐり」

当館の生命展示室には世界中から収集された様々な標本が展示されています。そのうち昆虫コーナーには世界中から集めた、実物の昆虫標本が展示してあり、ラベルには種名とともに、標本が採集された産地(国など)が書いてあります。世界中の昆虫たち、それも本物に、当館を訪れるだけで出会えるのです。「世界」の各地から集まった標本を通して、魅力的で不思議な昆虫の「世界」を満喫してください。

博物館で世界中の昆虫を見た人から、実際に野外で出会ってみたいと話を聞くことがあります。例えばアトラスオオカブトムシやバイオリンムシは東南アジアに行って頑張れば出会える虫ですが、主に南米に生息するヘラクレスオオカブトムシやミイロタテハなど、様々な理由から簡単に旅行ができない国や地域に生息している昆虫もいます。当館は、このような世界中の生き物の実物に出会える施設でもあるのです。

実は、子供たちに特に人気がある海外産の大型のカブトムシやクワガタムシは今でこそペットショップなどで生きた個体が売られていますが、輸入が解禁された1999年以前には、生きた個体はもちろん、標本でさえも簡単には見られませんでした。開館してまもないころの当館に、私は小学校の遠足で来ましたが、展示室にある標本は初めて実物を見るものばかりで、引率の先生が呆れるほど眺めたものでした。今の昆虫少年たちの目には、展示室にある大きなヘラクレスオオカブトムシの標本はどう映っているのでしょうか。気になるこの頃です。

生命展示室に展示されているヘラクレスオオカブトムシのオス。体が分厚く、重いため、標本針を用いての標本箱への固定には毎回苦労します。今でこそペットショップで売られていますが、30年くらい昔には標本が見られただけでも感激したものです。

(学芸員・渡辺恭平

第36回「最古の岩石は本当に最古?」

地球展示室には世界最古の岩石であるアカスタ片麻岩へんまがんが展示されています。アカスタとは採石されたカナダの地名のことで、正式な岩石名はトーナル岩質片麻岩です。これは、花崗岩かこうがんの仲間であるトーナル岩という火成岩が、地下の深いところで熱や圧力を受けて片麻岩になったものです。トーナル岩という岩石名に聞き覚えはないでしょうか?トーナル岩は、神奈川県の丹沢山地でも見られる岩石で、神奈川県の岩石にも指定されています。

さてこのトーナル岩ですが、この岩石のもととなるマグマは、玄武岩質の地殻ちかくが溶けることでできます。つまり、トーナル岩があるということは、既に玄武岩質の地殻があり、その一部が溶けてマグマができたことを物語っています。その過程には、地球が形成された時の表面が溶けた状態になっていたマグマオーシャンの時代を経て、地球が冷えて、海ができ、玄武岩からなる海洋プレートが誕生し、マントル対流によって海洋プレートが移動し、ぶつかり合い、プレートの沈み込みが起こり、そして玄武岩の地殻が溶けてトーナル岩のもととなるマグマができたという壮大なストーリーがあることが予想されます。ここで考えてみると、トーナル岩をつくり出した玄武岩が見つかれば、こちらの方がより古い岩石になるはずです。まだ見つかっていない古い玄武岩が、地球上のどこかにあるのかもしれません。

地球展示室のアカスタ片麻岩

(学芸員・山下浩之

第35回「恐竜の歯」

生命展示室にあるケースの中に、今は11種類の恐竜の歯を展示しています。

恐竜の歯と私たち哺乳類の歯との大きな違いは2つあります。1つめの違いは、歯の形です。恐竜では上あご、下あごそれぞれを見ると、ほとんど同じ形の歯が生えています。これに対して哺乳類では1つのあごに種類の違う歯が生えています。犬歯、臼歯きゅうしなどの種類がありますよね。2つめは歯の生え替わり方です。恐竜の歯は次々に生えてきますが、哺乳類ほにゅうるいの歯は一部の例外を除き1度しか生え替わりません。皆さんも乳歯から永久歯に生え替わりましたよね(まだの人も読んでくれていますか?)。

肉食恐竜の歯は、多少の違いはありますが、先のとがった鋭い三角形をしています。そして、多くの種類では、歯の縁に鋸歯きょしとよばれるギザギザがついていて、肉を切り裂くのに役立っていたようです。鋸歯は全く違うグループであるサメの歯でもよく見られますから、きっと肉を切り裂くのにとても良い構造なのでしょう。

恐竜の頭骨の手前に展示されている恐竜の歯(ケース内)と触れるレプリカ.

右は肉食恐竜の歯に見られる鋸歯の拡大写真.

(学芸員・大島光春

第34回「サルの世界の楽しみかた」

1階生命展示室奥に、ひときわにぎやかな展示があります。哺乳類ほにゅうるいの進化史において最初に森林に進出したのはサルの仲間です。樹上生活に適応したサルたちの個性的な色彩や体型、そしてユーモラスな姿勢は印象深いものがあります。この展示を作るときに、サルの標本をただ並べるのではなく、彼らの森での生活を再現したいと思いました。

注目したのは、サルたちの3次元空間の使い方と音声によるコミュニケーションです。歩いたり走ったりするだけでなく、ぶら下がったり、登ったり、飛び移ったり、しっぽをくるりと巻き付けたりするサルたちのお得意ポーズは、彼らの樹上生活と深く関わっています。

サルたちは食べ物を探しながら一日中森を歩き回りますが、仲間の姿が見えなくても様々な声を出しながら群れのまとまりを保っています。声を聴くだけで誰がどこにいるかわかるのです。敵の接近を知らせる様々な警戒音もよく使います。展示室では、ボタン操作(使用見合わせ中)や音声ガイドによって野外録音をしたサルたちの声を聴くことができます。

見た目にもにぎやかなサルたちの姿をひととおりながめたら、チンパンジーやマントヒヒの声を聞きながら、目を閉じてみましょう。タンザニアの熱帯多雨林やエチオピアの山岳地帯にトリップできると思います。サルたちが生きる豊かな世界をぜひ想像してみてくだい。

霊長類展示

(学芸員・広谷浩子

第33回「神奈川県の固有昆虫」

ある地域にしか生息しない生物を「固有種」と呼びます。都道府県のような区域は人の都合で決めたものですが、偶然そうした区分の中にしか生息していない固有種も存在します。神奈川県は面積こそ全国43位の小さな県ですが、数種の固有昆虫の存在が知られています。3階の神奈川展示室には、横浜市の鶴見川河川敷だけに生息するヨコハマナガゴミムシ、丹沢山塊に生息するタンザワナガゴミムシが展示されています。これらはナガゴミムシ属という甲虫の仲間で、後翅うしろばねが退化して飛べず、歩くことしかできません。移動能力に乏しいため、河川や平野などの地理的な障害による隔離や特異な環境に対応する進化により固有化が進みやすく、各地で地域固有種が知られているグループです。

ヨコハマナガゴミムシは、鶴見川流域の都市化にともなってその生息地の大部分を失い、現在では保全されたわずかな地域にのみ残存する絶滅危惧種になってしまいました。

ヨコハマナガゴミムシ(左)、タンザワナガゴミムシ(右)

(学芸員・苅部治紀

第32回「カモノハシ恐竜の歯」

第16回にも登場したカモノハシ恐竜の、歯のはなしです。平たい口先の形からカモノハシ恐竜と呼ばれています。この平たい口先には歯が生えていなくて、あごの後ろの方に頬歯きょうしという歯が生えています(写真の左が口先、右が奥)。

この写真はカモノハシ恐竜であるハドロサウルス類の右の下あごを内側から見たところです。大きな塊になった歯をよく見ると、小さな縦長の六角形が見えます。実はこれが1本の歯です。この小さな歯がたくさん集まって、びっしりくっつくことで、1本の歯のように機能します。これをデンタルバッテリーと呼んでいます。デンタルバッテリーをバラバラにすると図のようになります(これでも2本くっついていて、濃い灰色が古い歯)。

1頭のハドロサウルス類には、このデンタルバッテリーが上下×左右で合計4つあります。上下の歯をこすり合わせて植物を細かくしていたと考えられています。こすり合わせてすり減っても、続けてどんどん生えてくるので、かみ合わせが悪くて困ることがありません。

写真:ハドロサウルスの右の下あごを内(舌)側から見たところ.
図:デンタルバッテリーをばらばらにした歯.薄い灰色が外から見える六角形の部分.濃い灰色がすり減った古い歯.

(学芸員・大島光春

第31回「少ししゃがんでミズオオトカゲの骨格を見ると・・・」

当館には、東南アジアに生息するミズオオトカゲの剥製はくせいと全身骨格が展示されています。ミズオオトカゲの骨格を少ししゃがんでよく見ると、あごの下に細長い骨が見えます。これは、舌を支える「舌骨ぜっこつ」という骨です。舌の形や役割は、食べ物の種類、捕まえ方などによって異なり、舌骨の形も様々です。オオトカゲの仲間は、ヘビのように先が二又になった細長い舌を持ち、これをチロチロと口の内外に出し入れしています。口から長い舌を突き出すため、バネとなる筋肉とそれを支える舌骨は長くなり、肩の前ぐらいまで伸びています。獲物を食べる時にはあまり役立ちそうもないこの長い舌にどんな機能があるのでしょうか。実は、オオトカゲの仲間はヘビと同じように嗅覚きゅうかくが大変優れています。長い舌を口からペロリと出して、空気中の匂い物質を取り入れ、口の裏側にある嗅覚器きゅうかくき(ヤコブソン器官)まで運んで匂いを感じ取っているのです。また、二股の舌、左と右のどちらから届いた匂いが強いかを判別し、匂いのもとを辿たどることができます。この舌によって、穴の中だろうが、水の中だろうが、獲物の居場所と距離を知ることができます。

当館のミズオオトカゲの全身骨格には、舌骨に加えて、骨格では残りにくい先割れした舌の先端までしっかり展示されています。残念ながら半開きの顎からわずかに見える舌は、接写した写真でも見えづらいので、再開館した際に少ししゃがんで、横から前から角度を変えてミズオオトカゲの口を観察してみてください。

生命展示室のミズオオトカゲの全身骨格。

(学芸員・松本涼子

第30回「謎のマグロ」

博物館の展示には剥製はくせいが欠かせません。魚類の場合、まるごと防腐処理を施した後に体内の筋肉や内臓、頭部を除く骨格をそっくり取り出して樹脂と入れ換え、体表には生鮮時の写真を見ながら彩色が施されます。生命展示室の魚類コーナーに展示されているマグロの仲間のメバチも同様な工程を経たものと考えられます。この剥製は当館が開館する前の開設準備室時代にクロマグロを求めて発注したものですが、横浜の倉庫で対面した時に目が大きいことや胸びれが長いことからクロマグロではないことがすぐに分かりました。結局、改めて同定した上で正しい名前ラベルを付けて展示することになったのですが、いざ同定を試みると一筋縄ではいかないことがわかってきました。日本にはマグロの仲間が5種分布していて、そのうちクロマグロとビンナガでないことは確実なのですが、残りのコシナガ、キハダ、メバチのいずれにも決めがたい特徴を持っていたのです。悩みに悩んだ末、体サイズを考慮した胸びれと、背びれの鎌のように伸びた部分の長さを重視してメバチに同定しました。しかしこの“もやもや”感は現在も続いていて、最近では最大サイズのコシナガに誤った彩色が施されたものではないかと思い始めています。今後の研究次第では、この剥製の名前ラベルが変わるかもしれません。

メバチに同定した剥製 全長約1.3 m

(学芸員・瀬能 宏

第29回「不思議な貝からひらめくものは?」

螺旋らせん螺線らせんの「」という字は一字で「巻貝」を意味するように、巻貝はからだの中に螺線を持つことが大きな特徴の生きものです。

神奈川展示室、相模湾の貝のコーナーに展示されている「チマキボラ」は、とりわけ螺線がよく目立つ巻貝です。巻いている殻の上部が大きく張り出して角張り、まるで階段のようになった姿は独特で、他に似た貝がほとんど見当たりません。日本でも古くから珍しい貝として知られ、江戸時代の本草ほんぞう学者、武蔵石壽むさしせきじゅが著した「目八譜もくはちふ」という貝類図鑑にも描かれています。海外のコレクターにも人気があり、英語では「Japanese Wonder」という名でよばれています。近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトもこの貝に魅了された一人として知られており、世界遺産「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」の構成資産の一つである、ニューヨーク・マンハッタンのグッゲンハイム美術館は、この貝からインスピレーションを得て設計されたと言われています。

同じ場所をぐるぐる回っているように見えても、見かたを変えると上昇したり下降したりしている螺旋は、しばしば禍福かふく、人生、歴史、輪廻りんね、永遠などになぞらえられます。石壽やライトがチマキボラを見て何を思ったのかはわかりませんが、みなさんはこの“日本の不思議な”巻貝を見て、何かひらめくものがありますか?

チマキボラ

(学芸員・佐藤武宏

第28回「日本の国蝶 オオムラサキ」

ジャンボブック展示室の一角に、日本で見られる大半の蝶を展示しています。その中で、ひときわ目をひく大きな蝶がオオムラサキです。

オオムラサキは日本の国蝶として有名であり、切手に登場したこともあります。手入れが行き届いた里山に生息するため、近年、里山の開発や荒廃で姿を消している昆虫の一つですが、県内では丹沢山麓や大磯丘陵の里山などで、ときおりその優雅な姿を見ることができます。タカ類やワシ類のように滑空しながら樹冠(樹木の最上部とその周囲の空間)を飛び、羽音を立てながら樹液が出たクヌギに止まり、時にスズメバチですら蹴散らすその力強さは、国蝶にふさわしい品格です。

私は中学生の時、初めてオオムラサキに出会いました。今でも、展示を見るたびにあの興奮がよみがえります。この蝶は樹液に集まり、羽を閉じたり開いたりしますが、開いた時に見えるあの幻惑的な色合いが、どうしても標本には残せません。博物館で見た後に、ぜひ生きたオオムラサキを探しに、初夏の野山に出かけていただきたいと思います。

オオムラサキのオス

(学芸員・渡辺恭平

第27回「カメの祖先だと考えられていたこともありました」

ほ乳類の剥製(はくせい)がずらりと並ぶ展示台の脇に置かれた赤茶色の化石にお気づきでしょうか?これは、ペルム紀後期(約2億5900万年前)に生息したパレイアサウルスという爬虫類(はちゅうるい)です。ほぼ全身の骨が生きていた時に近い順番で並び、うつ()せの状態で保存されています。

かつて爬虫類は、頭骨の後方に開いた孔の数で4つのグループに分類されていました。このうちパレイアサウルスは、頭の後ろに孔のない「無弓類(むきゅうるい)」に分類され、カメの祖先だと考えられていました。しかし、1980年代以降に系統解析(けいとうかいせき)が導入された結果、爬虫類の分類は大きく様変わりし、現在では、パレイアサウルスは、メソサウルス(第6回参照)とともに三畳紀(約2億130万年前)に絶滅した「側爬虫類(そくはちゅうるい)」というグループに分類されるようになりました。一方カメは、ワニや恐竜に代表される「主竜類(しゅりゅうるい)」により近いと考えられています。

パレイアサウルスは、ペルム紀当時、陸続きだったアジア、ヨーロッパ、南アフリカなどに広く分布していました。展示されている化石は、ロシアから産出したものです。全長1~3 mと比較的小型ではありますが、がっしりとした骨格で、頭の表面はトゲトゲ、ゴツゴツしています。いかつい骨格ですが、植物 を食べていたようです。残念ながら日本からパレイアサウルスは見つかっていませんが、その全身骨格が見られるのは博物館ならではでしょう。再開館したら、ぜひ足を止めてみてください。

ペルム紀後期(約2億5900万年前)に生息した側爬虫類のパレイアサウルス。
かつてはカメの祖先とも考えられていた。

(学芸員・松本涼子

第26回「樹脂に埋め込まれた隕石」

2020年の7月に、千葉県の北部に「習志野隕石いんせき」が落下しました。この異なる場所に落ちた2つの隕石の破片がニュースで放映されましたが、断面が白いものと赤いものとがあり、果たして同じ隕石なのか、疑問を持った方がおられたと思います。赤い隕石は、地上に落ちてから、少し時間が経過したために、隕石中の鉄分がびてしまったのです。宇宙には酸素がほぼないため、隕石が錆びることはないのですが、地球に落ちてくると、このように大気中の酸素や水分に触れて化学反応を起こしてしまうことがよくあります。

当館の地球展示室に入ってすぐのガラスケースに展示されているアドマイアー隕石と呼ばれる樹脂で覆われた隕石は、アメリカ合衆国のカンザス州で1881年に発見された、大きさが45×30×20 cm、重さが3 kgの比較的大きなものでした。その後、乾燥したカンザス州から日本に運び込んだところ、湿気が隕石中の硫化物と反応して、分解が始まったのです。そのため、空気との接触をなくすために、アクリル樹脂に埋め込み、現在に至りました。化学反応の痕跡は、アドマイアー隕石を横から見ると分かります。

樹脂に埋め込まれたアドマイアー隕石
手前の隕石の下側に、白濁した化学反応の痕跡が見られる

(学芸員・山下浩之

第25回「ハコネコメツツジは何属か?」

ハコネコメツツジは1cmほどの小さな白い筒型の花を咲かせるツツジで、山地の風当りの強い斜面の岩場に張り付くように生えています。その分布域は秩父山地や、富士・箱根、伊豆半島、伊豆諸島に及び、南限は伊豆諸島の御蔵島(みくらじま)です。

多くのツツジ属の植物は、やく(おしべの先端の花粉が詰まっている部分)の先端の穴から花粉を出しますが、ハコネコメツツジはやくが縦に裂けて花粉がでます。この特徴から、ハコネコメツツジはツツジ属ではなくハコネコメツツジ属とされていました。しかし、その後の調査で、ハコネコメツツジとツツジ属のオオシマツツジが生育している伊豆諸島の神津島の天上山で、この2種の雑種であるコウヅシマヤマツツジが見つかりハコネコメツツジはツツジ属に含まれると考えられるようになりました。これら3種のツツジの模型は神奈川展示室で見られます。

もっと詳しく知りたい方は、神奈川県立生命の星・地球博物館研究報告(21)「ハコネコメツツジとオオシマツツジの自然雑種について」や「高橋ほか(1998)コウヅシマヤマツツジの雑種説を支持する証拠. 植物研究雑誌, 73(3): 170-173.」をお読みください。

 

オオシマツツジ(左)、コウヅシマヤマツツジ(中央)、ハコネコメツツジ(右)の模型

 

(学芸員・石田祐子

第24回「モルフォチョウのおなか」

博物館の昆虫展示の中でも、とりわけ人気があるものの一つに、モルフォチョウがあります。この蝶は美しい昆虫として著名であり、羽の構造色の話などが頻繁にテレビや本で紹介されるので、知っている人は多いでしょうし、博物館で初めて実物を見て感動した人もいるのではないでしょうか。

展示している蝶を見て、観察力がある人はあることに気づくでしょう。それはモルフォチョウの仲間だけ、腹部(おなか)がないことです。これは当館に限らず、全国に展示してあるモルフォチョウの多くも同様で、実はちゃんとした理由があるのです。

モルフォチョウは美しい見た目に反して、かなりのゲテモノ喰いで、成虫は動物の糞や死骸、腐った果実などに集まり、それらを食べます。そのため、体には脂が多く蓄えられており、腹部を付けたまま標本にすると、脂が翅に移り、見栄えが悪くなってしまいます。昆虫好きにとって、腹部がない標本は悲しいものですが、見栄えのために苦渋の選択をせざるを得ない、愛好家泣かせの罪な虫なのです。

キプリスモルフォの画像

キプリスモルフォ

(学芸員・渡辺恭平

第23回「全部エビなんです」

実物標本を図鑑に見立てたジャンボブック展示室には、甲殻類こうかくるいに関する展示が2冊分、展示されています。ひとつは「カニに似ていてカニでないカニ」、そしてもうひとつは「10本脚をもつ大物たち」です。前者にはタラバガニやイバラガニといった「カニ」と名がつくヤドカリ類が、後者にはエビ類やカニ類が展示されています。

10本の脚を持つこれらのなかまは、節足動物門せっそくどうぶつもん十脚目じっきゃくもくに分類され、大きくエビ、カニ、ヤドカリとして認識されています。かつてこれらはそれぞれ独立した3つの亜目あもくに分類されると考えられており、エビ、カニ、ヤドカリはすべて共通の祖先からそれぞれ進化した対等な関係にあるとされていました。しかし、化石を含めた十脚目の研究が進むと、十脚目の祖先は原始的なエビのような姿の生きものであることがわかってきました。エビのからだは頭部と胸部が癒合ゆごうした頭胸部とうきょうぶ、腹部、尾部びぶから構成され、それが一直線に配列しています。そして、進化の過程で腹部と尾部がねじれて特殊化したのがヤドカリ、腹部と尾部が折り畳まれて胸にくっつくように特殊化したのがカニと、現在では考えられています。

つまり、「カニに似ていてカニでないカニ」であるタラバガニを含めたヤドカリ類も、カニ類も、そしてもちろんエビ類も、「10本脚をもつ大物たち」は実は全部エビなのです。

ジャンボブック

(学芸員・佐藤武宏



第22回「天井に光る“地球”」

エントランスホールの展示と天井画の画像

緊急事態宣言が続いていた5月のある日、博物館のエントランスホールに立ってみました。ダイナミックな空間に身を置いてみたくなったのです。

シンボル展示の白亜紀の化石たち(*1)を見上げ、さらに頭上の天井画(*2)を仰ぎ見てみました。そこには輝く“地球”がありました。臨時休館により照明が消された真っ暗な常設展示室とは対照的な光景です。実は停電の時でさえ、天井の“地球”の光は時間の移り変わりとともに変化します。屋上の天窓から採光した光を利用しているのです。博物館の内部空間に、リアルタイムに変化する天空光という外部空間の要素を取り入れることで、ダイナミックな地球の姿を見事に映し出していると思います。

また、恐竜と自分が立つ位置を白亜紀に見立ててみると、高いところに光る“地球”は、現在であり、未来を象徴したものにも見えてきます。なるほど、勝手な解釈ながら、シンボル展示の意義が深まってきます。展示の中に、タイムラインと「過去・現在・未来、ずっと地球は変化の中にありますよ」というメッセージを感じます。

Stay Homeでとどまり続けたハコの中で、未来を見つめた瞬間でした。

*1:白亜紀後期の恐竜(チンタオサウルス)、魚類(クシファクチヌス)、翼竜(アンハングエラ、トゥプクスアラ)の展示
*2:天井画は上哲夫氏による作品「宇宙波」

(学芸員・田口公則

第21回「ザ・日本のカニ」

カニはお好きですか? 食の世界ではズワイガニ、ケガニ、タラバガニを日本三大ガニと呼ぶそうですが、ガザミやアサヒガニも人気ですね。当館にもカニはたくさん展示されています。

ところで、イチョウガニはご存じですか? 実は知る人ぞ知る由緒(ゆいしょ)正しいカニなのです。

イチョウガニの学名はCancer japonicus、Cancerはラテン語で「カニ」を、japonicusは「日本の」を意味します。つまり、イチョウガニこそが「ザ・日本のカニ」なのです。基準となった標本は東京湾で採集されたもので、関東以南の暖かい海の水深100メートル以浅に生息します。とても美味しいカニですが、サイズが小さく、まとまって得られないことから市場に出回ることは少ないようです。

さて、英語でcancerというとガン、つまり悪性腫瘍(あくせいしゅよう)を意味します。不規則に盛り上がる腫瘍の姿がカニの甲に、腫瘍を取り囲む無数の血管が甲を取り囲む多数の脚にそれぞれ似ていることが、その由来とされているようです。この病気を「cancer」と名づけたのは医学の祖ヒポクラテスとか。これにも由緒の正しさを感じます。

このイチョウガニ、神奈川展示室に展示されていますし、「ウェブで楽しむ地球博」の「ぬりえひろば:標本deぬりえ」でも取り上げています。「ザ・日本のカニ」、どうぞお見知りおきを。

イチョウガニの画像
イチョウガニ

(学芸員・佐藤武宏

第20回「噴火の様子が違うわけ」

「地球の仕組」(1階)にある写真展示から、いくつか噴火の様子の違いが分かるものを選んでみました(図)。もくもくと大きな煙が立ち上る噴火に、赤い飛沫が飛び散る噴火、ドロドロと溶岩が流れる噴火が見て取れます。図の1、2、3の順で、噴火の爆発の大きさが小さくなる様子が分かります。では、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?

どのような噴火になるかは、たくさんの要素が複雑に関係していますが、噴火の爆発力に着目すると、その答えの一つはマグマに溶けている「水」が握っています。水は、液体から気体に変わると、体積が急激に膨張するため、噴火の爆発力の源となるのです。コーラに溶け込んでいる炭酸のように、マグマには水が溶けています。マグマの圧力が下がったり温度が上ったりすると、水は溶けきれずに気体となってマグマの中に泡をつくります。この泡がマグマの中で十分に成長できないまま地上に来て、突然に破裂すれば爆発的な噴火になるわけです。

そして、泡の成長の仕方や外への逃げ出し方はマグマの粘り気によって大きく左右されます。粘り気の小さいマグマでは、気体となった水が脱け出しやすいため、マグマが火口にたどり着く途中で、気の抜けたコーラのようになってしまいます。そのため、図の3番のようにあまり爆発的にならず、溶岩を穏やかに流す噴火になるのです。

 

1: 新燃岳(鹿児島)、 2: エトナ火山(シチリア島)、3: マウナロア火山(ハワイ島)の画像
1: 新燃岳(鹿児島)、 2: エトナ火山(シチリア島)、3: マウナロア火山(ハワイ島)

(学芸員・西澤文勝

第19回「カエルの鳴き声クイズに挑戦」

3階ジャンボブックコーナーの人気展示の一つが、カエルの鳴き声クイズです。スタートボタンを押すと、5種類のカエルの鳴き声が順に流れ、声の主を全問正解すると祝福のメロディーが流れます(残念ながら感染症予防のため、当面の間は利用休止となっています)。

皆さんが野外でカエルの鳴き声を耳にするのは繁殖期です。オスの喉には鳴嚢(めいのう)と呼ばれる膜があり、鼻の孔(あな)と口をぎゅっと閉じて、肺からこの膜に空気を送り、風船のように膨らませ、音を反響させることで大きな鳴き声を作り出します。鳴嚢を持たない、ヒキガエルなども鳴くことはできますが、遠くまで響く大きな音にはなりません。カエルの種類によって喉の形が異なるため、作り出される音の高さやリズムも様々です。そのため、鳴き声は周囲の仲間に同種のオスであることを知らせる役割や、大勢のオスの中からメスに選んでもらうためのアピールの役割を果たします。

博物館の横を流れる早川では、5〜6月頃になると、日暮れ後に「フィフィフィ〜」というカジカガエルの鳴き声を聞くことができます。運が良ければ日中でも聞こえることがあります。また、小田原城でも日暮れ時になると、ニホンアマガエルの「ケッケッケッケッケ」という大合唱が始まります。博物館のカエルの鳴き声クイズはしばらく使えませんが、その代わりとして、博物館周辺の自然観察スポットを散策してみてはいかがでしょうか。

ジャンボブックの画像
ジャンボブック

(学芸員・松本涼子

第18回「世界最大級のハチ、タランチュラホーク」

キョジンオオクモバチとオオスズメバチの画像

地球展示室の昆虫コーナーの一角に、巨大な昆虫たちを紹介しているエリアがあります。ヘラクレスオオカブトムシのような良く知られた昆虫を始め、様々な巨大昆虫を展示していますが、その中に今回紹介する世界最大級のハチ、タランチュラホーク(キョジンオオクモバチ)も展示されています。

このハチの大きさを、参考までに日本最大級のハチであるオオスズメバチの女王バチと並べてみたのが、右の写真になります。オオスズメバチの大きさはおよそ5 cmなので、タランチュラホークの大きさが良く分かると思います。オオスズメバチも同じコーナーに展示してありますので、ぜひ実物を見比べてみてください。タランチュラホークという名前の通り、このハチはタランチュラ(オオツチグモ科のクモ)を襲い、幼虫の餌にします。この仲間はクモバチ科(旧和名、ベッコウバチ科)に属し、日本にも様々な種類が分布していますが、日本にはタランチュラがいないため、ここまで巨大な種は分布していません。どんな風にタランチュラを襲うのか、いつか見てみたいものです。

(学芸員・渡辺恭平

第17回「あなたはハシナガチョウザメを見たか!?」

ハシナガチョウザメの画像

当館には標本と画像を合わせて34万点余りの魚の資料が登録されています。その中でも特に学術的価値が高く、希少性や入手困難性、トピック性に加えて高い経済的価値をも併せ持つ、とっておき の魚がさりげなく展示されていることをご存じでしょうか?それは中国の揚子江の固有種ハシナガチョウザメです!今から3,400~7,500 万年前に栄えたグループの生き残りで、「生きている化石」として有名であるだけでなく、最大全長7 メートルに達する世界最大の淡水魚でもあります。2019年に発表された論文によると、この魚は1970年代には年間25トン ほどの漁獲があったそうですが、その後ダム建設や乱獲によって数を減らし、1993年には繁殖することができなくなり、2005年から2010年までの間に絶滅したと推定されました。つまり、今後この魚は博物館の標本でしか見ることができなくなってしまったというわけです。ちなみに当館の剥製は1980年代に現地で入手したものを1995年の開館に合わせて購入したものです。この魚の剥製を惜しげもなく見ることができる博物館が当館以外のどこにあるのか、インターネットを使ってぜひ探してみてください。そうすれば自ずとその価値を理解していただけるでしょう。

参考資料
Zhanga, H., I. Jaric, D. L. Roberts, Y. He, H. Du, J. Wu, C. Wang and Q. Wei. 2019. Extinction of one of the world's largest freshwater fishes: Lessons for conserving the endangered Yangtze fauna. Science of the Total Environment, online. DOI: https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2019.136242

(学芸員・瀬能 宏

第16回「カモノハシ恐竜の鶏冠」

カモノハシ恐竜とよばれている吻端が平たい恐竜のグループがあります(鳥盤目鳥脚亜目ハドロサウルス科)。カモノハシ恐竜には大きくわけて骨質の鶏冠(とさか)があるランベオサウルス亜科(当館ではチンタオサウルスがこの仲間)と、骨質の鶏冠がないハドロサウルス亜科(当館ではエドモントサウルスがこの仲間)の2つがあります。しかし、2013年には骨質の鶏冠がないハドロサウルス亜科のエドモントサウルスにも軟組織の鶏冠(つまりまさに鶏の鶏冠ような器官)があったことがわかりました(Bell et al., 2014)ので、鶏冠はカモノハシ恐竜に共通の特徴だったようです。

カモノハシ恐竜は発見された化石の個体数が多いので、胚やふ化直後の個体から全長10メートルを超える個体まで、成長過程もよく調べられています。また、足跡化石や一度に発見される化石が多いことから群れを作って移動したことが、巣の化石の相互位置関係から集団営巣したことがわかっています。ランベオサウルス亜科は鳴き声を骨質の鶏冠で共鳴させて増幅し遠くまで響かせることができたと考えられるので、群れの中における個体間の距離が離れた群れを形成し、逆にハドロサウルス亜科は鳴き声を軟組織の鶏冠ではあまり増幅できなかったと考えられるので、群れの中における個体間の距離が短く、コンパクトに纏っていたと推定されています(D.Evans, 2019福井県立恐竜博物館における講演)。

詳しくは、 Bell, P. R., F. Federico, P. J. Currie and V. M. Arbbour. 2014. A Mummifited Duck-Billed Dinosaur with a Soft-Tisue Cock’s Comb. Current Biology. 24: 70—75.

併せてどうぞ 自然科学のとびらVol.6,No.4 展示シリーズ4「エドモントサウルス(PDF/876KB)

エドモントサウルス・アンネクテンス全身骨格(実物)の画像
当館のエドモントサウルス・アンネクテンス全身骨格(実物)
頭骨に骨の突起はないが柔らかい鶏冠があったらしい

(学芸員・大島光春

第15回「ハマオモト-博物館の歴史を知る!?-」

ハマオモトの模型の画像

ハマオモト(別名ハマユウ)は海岸の砂地などに生育する植物です。日本では、本州(関東南部以西)から琉球に分布しています。神奈川県内では、天神島の自生地が県の天然記念物に指定され、『神奈川県レッドデータ生物調査報告書2006』でハマオモトは絶滅危惧種ⅠA類とされました。ハマオモトは平均気温15℃(年最低気温の平均値が-3.5℃)の等温線より南側の地域に分布するとされ、その分布北限線はハマオモト線と呼ばれ、気温による植物分布の1つの基準となっています。

このハマオモトの模型は、1995年3月、横浜馬車道の神奈川県立博物館(現:神奈川県立歴史博物館)の自然系部門が独立する形で生命の星・地球博物館が誕生する際に、神奈川県立博物館の開館当時(1967年)から展示室のジオラマにあったものを小田原の地に持ってきました。生命の星・地球博物館の前身が横浜にあった頃から50年以上、博物館の歴史を見守ってきた展示物の1つです。

古いものだけに、昨年(2019年)秋に、茎が折れてしまいましたが、どこを接いだのかよく分からないくらいに修理しました。さてどこを接いだでしょうか?再開館したら確かめに来てください。

(学芸員・石田祐子

第14回「鳥類の翼の形」

地球上には、現生種だけで1万種ほどの鳥類が確認されています。鳥類はほぼ全身が羽毛に覆われ、前肢は一般的に「翼」と呼ばれます。ダチョウやエミューといった走鳥類とコウテイペンギンやフンボルトペンギンといったペンギン類などを除き、多くの鳥類の翼は飛ぶために発達しています。

翼の形は種によって違います。例えば海に点在している餌場を求め、広範囲を移動するアホウドリ類やミズナギドリ類の翼は、空気抵抗の少ない細長く先端がとがった形をしており、高速飛行をすることができます。季節ごとに長距離を移動するコウノトリやサシバなどは幅の広い大きな翼をもち、風を受けて上昇し、グライダーのように緩やかに降下することを繰り返しながら、目的地まで移動します。一年を通じて陸上のほぼ同じ場所ですごすカケスなどの翼は、比較的短く丸い形をしています。このように鳥類の翼はすんでいる環境や移動距離など、その種のくらしぶりを反映した形をしているのです。

1階にある生命展示室には、様々な鳥類の飛翔時の姿勢を復元した剥製が展示されています。野外ではなかなか観察できない翼の形を、展示室でじっくりと見比べてみませんか。

生命展示室の鳥類剥製の画像
生命展示室の鳥類剥製

(学芸員・加藤ゆき

第13回「比べてみよう!5体のクマ剥製」

大型の哺乳類や恐竜の標本は迫力があり、博物館の人気者です。皆さんは、大型哺乳類と聞いてどんな哺乳類を思い浮かべるでしょうか?子どもたちに問いかけると、クジラ!ゾウ!キリン!サイ!ライオン!といった声が聞こえてきそうです。クマもぜひ仲間に入れてほしいですね。なぜなら、クマ(正確にはヒグマ)は日本最大の陸上哺乳類だからです。

日本には、北海道にヒグマ、本州と四国にツキノワグマという2種のクマが生息しています。当館では、神奈川展示室に並んでいます。世界レベルで最大のクマは、ホッキョクグマで、大きなものでは体長3 m、体重800 kgほどあります。次に大きいのはヒグマです。こちらは生命展示室に並んでいます。ヒグマは地域によって大きさに違いがあります。アメリカ合衆国アラスカ州のコディアック島には、ホッキョクグマに匹敵する大きさの亜種コディアックヒグマが生息しています。エントランスホールに展示され、ウェルカムベアの愛称で親しまれている剥製が、それです。

博物館が再開館したら、ぜひクマの剥製を見に来てください。ヒグマ同士あるいは種の違うクマの大きさや形を見比べてみると、何か新しい発見があるかもしれません。

神奈川展示室のツキノワグマ(左)とヒグマ(右)の画像
神奈川展示室のツキノワグマ(左)とヒグマ(右)

(学芸員・鈴木 聡

第12回「写真もみてね!地球の熱と火山の噴火」

火山の噴火の展示の画像

1階常設展示の「地球誕生」を過ぎると「地球の仕組」が始まります。この展示では、地球で起こっている大地の動きの仕組みを解説しています。映像やパネルでの説明が多く、少し難しく感じる方もいるかもしれませんね。そんな方に、この展示を理解するためのキーワードをひとつ、それは「熱」です。

地球の熱の源には2つあります。1つは地球ができる際に小さな惑星同士が衝突した時のエネルギーで、もう1つは地球内部にある放射性元素の核分裂によるエネルギーです。地球の内部は、そこから生まれる熱を冷ますように、物質を移動・循環させながら動いているのです。それが、大地が動く原因なのです。実は、大地の動きの1つである火山の噴火も地球が冷えるための現象の1つです。熱い溶岩や火山灰が出てくる火山は、まさに地球の中から熱が逃げていく現場なのです。そんな火山の噴火の様子について、円い柱の写真展示で紹介していて、さまざまな噴火を見ることができます。なぜ噴火の様子が違うのかは、また別の機会に。

(学芸員・西澤文勝

第11回「ゴンフォテリウムの眠った場所」

ゴンフォテリウム(レプリカ)の画像

この博物館の中には保存状態や1頭に由来するなど、いわゆる化石としての「良い標本」であるのに、全く学術的な記載がされていない標本があります。

Gomphotherium sp.(ゴンフォテリウム)もその一つです。ゴンフォテリウムはゾウの仲間(写真)ですが下顎にも牙があり、今のゾウとは少し違った趣きのあるゾウです。このゴンフォテリウムは、アメリカ合衆国の中西部のネブラスカ州で見つかりました。ネブラスカ州の北側のメリマンという所から南へ6kmほど行った、ナイオブララ川の近くです。産出した地層がヴァレンタイン層で、時代は新生代新第三紀中新世(1,200万年前ごろ)にあたります。化石は頭骨の一部、各足の先端、腰の骨の一部(恥骨(ちこつ))などが欠損部分で、その他の部分が残っていました。また化石は、ゴンフォテリウムが死んだ後、一気に堆積物によって埋められたらしく、骨がバラバラになっていませんでした。このような、この化石に関する基本的な情報ですら、まだ公表されていないのです。

(学芸員・樽 創

第10回「昆虫愛好家垂涎の珍虫 テントウゴキブリ」

博物館の展示室には、県内はもとより、世界中から集めた様々な昆虫が展示されています。生命展示室には、大きさ、形、美しさ、擬態などにテーマをおいて、厳選した昆虫たちを展示しています。しばしば博物館にある昆虫の中で、一番珍しいものは何ですか?と聞かれることがあります。バックヤードには世界に一個体しか標本がない昆虫もいくつかあり、選ぶことは難しいですが、展示室にある昆虫の中では、あるゴキブリが珍しい昆虫の筆頭であると私は考えています。それが今回の主役、テントウゴキブリです。

まずは、写真をご覧ください。この中にゴキブリが映っています。何匹がゴキブリでしょうか?実はすべてテントウゴキブリの仲間です。食べると苦いテントウムシに擬態しているといわれますが、テントウムシに比べると遥かに珍しく、昆虫愛好家があこがれる希少な虫です。ゴキブリは嫌われ者ですが、その中で害虫となる種はごくわずかで、多くは森林の中で静かに暮らしています。野外にいるゴキブリの中にはテントウゴキブリを筆頭に、美しい種類も多いのです。ぜひ皆さんも展示室の標本の中から彼らを探してみて下さいね。

テントウゴキブリの画像

テントウゴキブリ、あなたはどの模様がお好きですか?

(学芸員・渡辺恭平

第9回「リンドウの花の性」

リンドウは草原などの明るい環境に生育する植物です。3階の神奈川展示室にあるリンドウの模型を見てみると、左の写真にあるように、花の中心部分にあるおしべとめしべの配置がそれぞれ違っています。どうしてこうなっているのでしょうか…?

植物の中には自家受粉(同じ花の中での受粉)を避けるためにおしべが花粉を出す時期(オスの時期)とめしべが花粉を受け取れるようになる時期(メスの時期)をずらしているものがあります。そして、その様子がこの展示模型に表現されているのです。

中央下の花は咲いて間もない花を表現しており、5本のおしべが花の真ん中に集まって、めしべはおしべの下に隠れています(オスの時期)。その後、左上の花の様に、おしべはしおれて広がり真ん中にあるめしべが伸びてきます。そして、右上の花の様に、中央のめしべが伸びてきます(メスの時期)。

このような精巧な模型であるためか、「本物ですか?」と質問されたり、「水やり大変ですね」と声を掛けられたりすることもあります。

リンドウの模型の画像

リンドウの模型

(学芸員・石田祐子

第8回「これか~!今の地球じゃできないコマチアイト」

コマチアイトの画像

皆さんは博物館でお気に入りの展示物を見つけたことはありますか? 私の場合、まだ学芸員になる前でしたが、この博物館を初めて訪れた時に出会って大変感動した標本があります。それは「コマチアイト」。一見ただの地味〜な石なので、その存在にすら気づかない方も多いかもしれません。でもこれ、今の地球じゃできない、すごい岩石なんですよ。

私がその名前を知ったのは、岩石学の講義を受けていた大学生時代。「マグマがものすごい高温のまま地表にまで上昇してきた時しか形成されない火山の石」「今よりずっと熱かった太古の地球の証人」と聞き、いつか見てみたいと思っていた憧れの岩石でした。この岩石の中では、8月の誕生石(ペリドット)としても知られる「かんらん石」という鉱物が、松葉のような細長い棒状の形をしています。現在の地球でできるマグマの温度だと、かんらん石は地表に出る前にマグマの中で結晶化してしまい、このような棒状(急に冷やされてできた結晶の形)にはならないのです。

当館では、教科書や図鑑に出てくる、あんな標本やこんな標本を各種取り揃えています。「本で読んだ、話に聞いてたあれの実物は、これか〜!」という一品を、ぜひ博物館に探しに来てください。
詳しくは、自然科学のとびら第7巻3号 展示シリーズ7「草の化石ではありません―コマチアイト―(PDF/924KB)」をお読みください。

(学芸員・石浜佐栄子

第7回「最後の展示は人類です」

当博物館の観覧ルートの最後にあたるのが、人類進化をテーマにした展示「くらべてみよう!いろいろな人類」です。3階のジャンボブック展示室の奥にあり、濃いブルーの背景に人類の頭骨がずらりと並び印象的です。700万年前の化石サヘラントロプスから現代人まで、様々な形・大きさの人類がいます。真っ黒でゴリラの頭骨のように頭頂部にエッジ(矢状隆起といいます)がついている化石もあります。展示室の入口からみても、このページは目立つので、「わーい骸骨だあ」と子どもたちが集まってきます。頭骨から、脳の発達程度や食性がわかり彼らの暮らしが想像できます。ずらりと並べられると、人類の多様性と人類進化の道すじが実感できます。

地球の誕生から生命の誕生・発展と進んできた展示を人類進化の紹介で締めくくるのは意義深いことです。ジャンボブック展示室の更新は担当学芸員に任されており、2000年代以降のたくさんの重要な発見によって次々と塗り替えられる最新の人類進化理論をその都度紹介することができます。ネアンデルタール人と現代人の混血、同じ場所に3種の人類が同時にすんでいたことなど、興味深いニュースはたくさんあります。展示をみると、ニュースはさらに面白くなると思います。

ジャンボブックの画像
ジャンボブック

(学芸員・広谷浩子

第6回「生命展示室の入り口で足を止めよう!メソサウルスの見どころ」

メソサウルスは、ペルム紀前期(約2億9000万年前)に生息した爬(は)虫類の仲間です。アフリカと南アメリカから産出しており、両大陸が繋がっていたことを示す証拠として、有名な化石です。また、この時代の多くの爬(は)虫類が陸上へと生活の場を広げていく中で、水中生活に適応した最古の爬(は)虫類としても知られています。例えば、団扇(うちわ)のように広がった後ろ脚は水をかくのに適しており、太い肋骨は水に潜る際の重りの役割を果たしたと考えられています。

次に頭部に注目してみましょう。口の両側に飛び出した無数の細い針のようものにお気づきでしょうか。これは、上顎(あご)と下顎(あご)の歯です。この歯ではフォークのように獲物を突き刺すのは難しそうです。では彼らはどうやって獲物を食べていたのでしょうか。最近の研究によると、上下の細い歯を檻(おり)のように使い、エビのように水中にフワフワ漂う柔らかく小さな獲物を口の中に閉じ込め、食べていたと考えられます。このように動物の骨や歯には、彼らが生きていた時の様子を知る手がかりが隠れています。博物館が開館したら、間近でじっくり観察してみてください。

メソサウルスの化石の画像
メソサウルスの化石

(学芸員・松本涼子

第5回「最古の化石の最新情報」

最古の化石の画像

生物が存在した直接の証拠となるのは化石です。今のところ最古の化石は、39億5000万年前のもので、カナダのラブラドル地方から見つかっています。見つかったのは、海底で堆積した泥岩が変成作用を受けたことによって生じたグラファイト(石墨)という物質です。生物の形はなく、グラファイトを構成する炭素の同位体組成(12C/13C 比)が現生生物のものと近いために生物由来と考えられています(Tashiro et al. 2017)。

最初の生物はバクテリアのようなものだったと考えられていますが、よくわかっていません。しかしおよそ40億年前の地球には生物がいたようです。この時代の堆積岩に由来する変成岩が広く地表に出ている場所が、グリーンランドのイスア地方(Ohtomo et al. 2013)とカナダ東部という隣り合う地域なのです。

当館では細胞がつながった化石が見つかった、オーストラリアのおよそ35億年前の岩石を展示しています。最古の化石からおよそ5億年(古生代から現在までと同じ時間)経った頃の生物ということになります。

詳しく知りたい方は、英語になりますが、「Ohtomo, Y., T. Kakegawa, A. Ishida, T. Nagase and M.T. Rosing. 2013. Evidence for biogenic graphite in early Archaean Isua metasedimentary rocks. AOP on Nature Geoscience's. 10.1038/ngeo2025.」や「Tashiro, T., A. Ishida, M. Hori, M. Igisu, M. Koike, P. Méjean, N. Takahata, Y. Sano, T. Komiya 2017. Early trace of life from 3.95 Ga sedimentary rocks in Labrador, Canada. Nature, 549:516-518.」を参照ください。

(学芸員・大島光春

第4回「ユーレイカ(わかったぞ)! ユウレイイカの姿勢」

ユウレイイカの展示の画像

博物館3階の神奈川展示室、深海生物のコーナーの写真です。上は1995年の開館時、下は2020年の臨時休館中の撮影ですが、違いがお判りですか?

生物を展示する場合には、姿かたちをきっちり整えた、人間で言えば「気をつけ」の姿勢で展示する方法と、普段の姿勢、いわば「休め」の姿勢を再現して展示する方法があります。無脊椎動物にとって「気をつけ」の姿勢とは、普通は頭を上に、腹を下にした姿勢であり、腕や脚を基準にはしないようです。イカの場合、眼や口のある部分が頭に、「胴」と呼ばれる部分が腹にあたるので、俗に「イカゲソ」と呼ばれる腕は自動的に上に配置されます。一方、近年の深海カメラの発達や、深海生物飼育技術の向上によって、これまで謎に包まれていたユウレイイカの生態が少しずつ明らかになってきました。すると、ユウレイイカは普段は腕を上に、ヒレを下にして海中を漂っていることがわかってきたのです。

つまり、ユウレイイカを展示する時の姿勢は「気をつけ」でも「休め」でも、わたしたちの思い込みとは反対だったのです。このことがわかったので、ユウレイイカを180度回転させ、上下を逆にする修正を施したのです。

(学芸員・佐藤武宏

第3回「リュウグウノツカイの剥製の秘密」

リュウグウノツカイは中深層と呼ばれる光は届くが光合成ができない水深帯(太平洋側:水深100~700 m;日本海側:水深25~200 m)に生息し、背鰭の前方が馬のたてがみのように伸びていることが特徴の魚で、大きいものでは全長5 mに達します。当館生命展示室に展示されているこの剥製は、1990年7月18日に小田原市の御幸の浜に衰弱して漂着したものです。当時の新聞によれば、全長は約4.2 mだったとのことですが、添えられた写真を見ると体の後ろの部分がちぎれて見当たりません。いつちぎれたかはわかりませんが、剥製にするために立ち会った当時の学芸員が見た時にはすでになかったそうです。ところが展示室の剥製をみると、尾鰭の先まで全身が揃っています。これはいったいどういうことでしょう?剥製の真ん中より少し後ろあたりをよく見るとその謎が解けます。縦に入る継ぎ目があるのです。実は欠損していた体の後ろの部分は、別の個体でレプリカ(複製)を作って接続したものだったのです!

相模湾のリュウグウノツカイについてもっと詳しく知りたい方は「崎山直夫・瀬能 宏. 2012. 相模湾におけるリュウグウノツカイ(アカマンボウ目リュウグウノツカイ科)の記録について. 神奈川自然誌資料, (33): 95-101(PDF/3MB)」をお読みください。

リュウグウノツカイの剥製の画像
リュウグウノツカイの剥製

(学芸員・瀬能 宏

第2回「展示室にそびえ立つ巨木」

ワイヤーの点検作業(展示室)の画像

生命展示室の奥に、幹の下半部が板状に張り出した巨木が展示されています。この板状に張り出した部分は、板根と呼ばれ、土壌の分解が早い熱帯地方などでは、養分を吸い上げるために地中深く根を張ることは無駄なことから、地上部を支えるためだけに発達したものです。

この巨木は、コームパッシア・エクセルサというマメ科の植物で、『ジャックとマメの木』を思わせます。元は50mはあろうかという巨木でしたが、道路を車で運べる長さが12mまでだったため、切断せざるを得ませんでした。また、トラックに積む都合で、板根の付け根の部分で切断しましたが、展示室では組み立てられていますので、注意してご覧ください。

また、この板根は太いワイヤーで吊られ、固定されていますが、1年に1度、足場を組んで点検し(写真)、直立に近い状態を保っています。なお、展示室での高所の点検作業については、自然科学のとびらVol.10 No.2(2004)展示シリーズ12「クジラつり(マッコウクジラの骨格)(PDF/662KB)」の記事をお読みください。

(学芸部長・田中徳久

第1回「日本最大の隕石展示、マンドラビラ隕石」

マンドラビラ隕石の画像

展示室に入って最初に出会う「マンドラビラ隕石」の紹介です。

博物館では、隕石を地球誕生の謎を解く鍵として展示ストーリーの冒頭で紹介しています。目に入った時の大きさと質感からレプリカや模型ではないかと思われる方も多いのですが、このマンドラビラ隕石は実物を展示しています。迫力あるこの隕石は、1911年にオーストラリア西方のマンドラビラで発見され、その名が付きました。その重量は2.5 tもあります(なんと当館エントランスホールの名物であるウェルカム・ベアの6頭分です!)。実は、この大きさでも衝突した隕石の一部で、1911年以降も次々と小さな破片が見つかっています(総重量24 t)。大きさと一緒に目を引くのは、表面にあいた無数の穴です。これは隕石が大気圏に突入した際、融点の低い鉱物が溶け出した跡と考えられています。

それにしても、どうしてこんなに重いのでしょうか?隕石には、「鉄隕石」・「石質隕石」・「石鉄隕石」という3種類があります。マンドラビラ隕石は、そのほとんどが鉄とニッケルの合金からなり(磁石にくっつきます)、鉄隕石に分類されることがその理由です 。開館したら磁石にくっつく様子を確かめにきてください。

(学芸員・西澤文勝